ミオリ〜夏〜

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ミオリ〜夏〜

 大学生活二年目の夏休み、ミオリから話があると言われ、いつかのバーガーショップへと誘われた。 「あのね、カナちゃん。ミオリね、タカシ先輩と付き合うことになったんだ。というより、付き合ってるの」  この春、私がタカシ先輩を好きだと言ったあの日。ミオリはすぐにタカシ先輩と約束を取り付け、その日のうちに二人で会ったと言った。そして私の話を持ちかけたとのことだった。  告白すらしなかった私は、預かり知らぬところで振られ失恋していた。  全てはミオリを介して過ぎ去った私のコイバナ。  面白くもなんともないコイバナの続きが、今日この日の展開である。 「ごめんね、カナちゃん」  実は、このシチュエーションでのこのセリフ、三回目である。  ミオリは欲しがり屋さんだから、私の好きになった相手はどうしても自分のものにしたいらしい。  中学のときが一回目、高校のときに二回目、そして大学で三回目だ。 「カナちゃん、タカシ先輩のこと好きだったのにね。ミオリのこと恨んでるでしょ?」  これも三回目だ。そういったことで優位に立ちたいのだと思う。  ストローでジュースを吸い上げる仕草がそれこそ憎たらしい。いちいち確認してくるところはミオリならではのデフォルトされたもの。 ”ううん、恨んでなんかないよ” ”ミオリの方がお似合いだよ”  言われたいんでしょうけど──。  でもね、ミオリ。  私は知っている。  ミオリは中学のときも高校のときも、私の想いを相手の男子に伝えていないってことを。  私は知っている。  ミオリは私を悪者に仕立て上げ、擦り寄り自分を売り込み相手の男子を手に入れていたってことを。  私は知っている。  今回も同じ手を使いタカシ先輩を手に入れたってことを。  ただ、今回違ったことと言えば、 「カナちゃん、実はあの日って四月一日だったでしょ。嘘ついちゃってもいいのかな〜って思ってさ」  何を言い出すかと思えばエイプリルフールに乗じて私に嘘をついたと言うのだ。  初めから仲介する気などなく、自分からアタックしに行ったとのたまった。  よくもまあ、ぬけぬけと。
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