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ミオリ〜春〜
『だったらミオリが言ってきてあげる』
大学生活も二年目に入ろうとしている春休み。私は午後の時間をミオリとバーガーショップで過ごしていた。
街で偶然にも出会ってしまい、休憩がてらのお茶タイム。
ミオリは、中学から大学まで一緒に過ごしている、カテゴリとしては女友達、といったところだ。
ミオリは私を親友だと呼んでいる。
私はミオリを……どうだろ。
腐れ縁、かな。
ミオリのどうでもいい自慢話に辟易してきたころ、ミオリ自身が話題の矛先をこちらに向けてきた。
それが始まり。
「ねぇねぇ、カナちゃんは好きな人いないの?」
人の噂話と自分の話が大好きなミオリ。この質問だって興味のほどが分かったものではない。
でも不思議と構えることなくミオリに話し始める私がいた。
「いるよ。タカシ先輩」
タカシ先輩は、一つ年上のサークルで知り合った先輩だ。私のことを気にかけてくれる優しい先輩である。
「タカシ先輩のことが好きだよ」
あっけなく答える私にミオリはやや驚いた様子だったが、目を見開きゆっくりゆっくり頷いて次の言葉を選んでいた。
「だったらミオリが言ってきてあげる」
言ってきてあげるは、私からの告白を代理してくれる、と認識してよろしいか?
昔からこういったことに首をつっこんできたがるミオリ。大事な場面にしゃしゃりでてはかっさらう、言い方悪いけど、そういう子だ。
だからミオリに大事なことを話すときは、実は慎重にならねばならなかった。
「ミオリがタカシ先輩に会ってきてあげる」
テーブルを挟んで私の正面にいるミオリは、身を乗り出して得意げだ。
ミオリはこういうとき、決まって『〜〜してあげる』って言うのよね……、もう慣れはしたけど、やはり耳に良いものではないみたい。
しかし、一度動き出したミオリの船はもう止まらない。
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