お望み通り、地味に生きてきましたが?

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「なっ、何をするんですの! セクハラ!」 「この眼鏡、度が入っていないよね? 裸眼の方が美人なのに、何故エレガントじゃない選択をしているんだ」 「どうして美しいかそうでないかで物事を判断しなければならないんですか?」  イレーネはまっすぐにレオンハルトを見つめた。  まるでブラックオパールの遊色のごとき、複雑な闇色が混じりあったイレーネの瞳。    はっ、とレオンハルトが虚を衝かれたような表情になった。  イレーネは奪い返した眼鏡をかけ直しす。 「カメレオンだなんてまどろっこしい。不法侵入者なら、もっと堂々と不法に侵入しましょう」  イレーネは右の人差し指と左の人差し指を立て、さながら、マッチを擦るように指同士をぶつけた。  一回、二回、三回。  指先から生まれるのは、赤と青を混ぜた紫色と、赤と緑を混ぜた黄色だ。  ばんっ! ……ぱぁんっ! 空に、次々と大輪の花が咲く。  にわかに辺りが騒がしくなる。警備兵たちがこぞって花火の発射元を探し始めたのだ。 「参りましょう、閣下」 「いいねぇ。エレガントだ」  結局目くらまし風の魔法も使いつつ、ふたりはデューラー家へと不法侵入を果たした。 ★ (三色を均一に混ぜ合わせると透明になるだなんて!)  イレーネは密かに驚いていた。  すべての色を均一に出力するのは卓越した技術がいる。しかも不安定で長持ちしない。
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