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イザベラは半泣きのイレーネを抱きしめて、あやすように頭を撫でてくれた。
★
魔法とは生活の利便性を向上させる手段だ。
この国は、他国と違って守護竜の加護のおかげで戦いを必要とせず、攻撃魔法が退化したという歴史がある。
生活魔法は『色』から生み出される。
基本は赤、青、緑の三色。
多くの魔法使いが、赤は炎、青は水などのイメージを込め、混色し、操る。
「前庭では緑の濃度を変えながら存在を認識させづらくするっていうのはどうだろう。さながらカメレオンのように」
「は?」
レオンハルトからの提案が一瞬理解できず、イレーネはぽかんと口を開けた。
徐々に理解が追いついてくると、今いるのがデューラー家の邸宅の裏手だというのを忘れて大声を上げた。
「信じられませんわ。ほんっとうに、信じられません!」
「声を荒げるなんてエレガントじゃないな。もう少し落ち着いたらどうだい」
推測では、家宅捜索をすることなどできない。
ということでレオンハルトが取った選択肢は『不法侵入』だった。
「レオンハルト様こそどこがエレガントですの。れっきとした犯罪ですわよ」
頬を膨らませ口を尖らせるイレーネ。
くくく、とレオンハルトは笑いを噛み殺しているようだ。
「イレーネ嬢」
ふと視線に気づいた次の瞬間、眼鏡を外されていた。
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