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それは、魔法学院では習わなかった技術だ。
「私の代で流行ったが、悪用されてはいけないと禁止されたんだよ」
彼の実力を知ったイレーネは評価を改める。
整いすぎた横顔。その輪郭をじっと眺めた。
(……この方、見た目だけではないのですね。多少、強引で乱暴ですが)
そして、シャンデリアが煌々と照らす廊下を、レオンハルトは突き進む。
その後ろを恐る恐るイレーネはついて行く。
「おかしいな」
「えぇ。人の気配がまったくしませんわ」
ひとつひとつ扉を開けて確認するも、やはり、誰もいないのだ。
先に応接間に入ったレオンハルトが、腕だけを廊下へ伸ばした。
「当たりだよ」
イレーネも部屋を覗き込む。
古時計から、ばさばさっと大量の魔法紙が雪崩れてきた。
★
会議室には山積みの魔法紙。その数、ざっと五千枚。
デューラー家から回収した、宮移しのための大事な道具だ。
「早速始めちゃう?」
「はいっ」
向かいに座るイザベラの声に、イレーネは勢いよく応じた。
今から魔法紙を一枚一枚点検しなければならない。書き換えられていないか、悪意が差し込まれていないかどうか。
確実に、骨の折れる作業だ。
「……」
「……」
黙々と、ふたりは作業を続ける。
「……?」
イレーネは指先に違和感を覚えた。しかし、魔法紙に異常は見当たらない。
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