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『俺より成績がいいなんて許せない』『愛想のかけらもない地味女のくせに』
それが、婚約を破棄された理由だった。
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(……し、信じられません。わたくしがこの三年間どんな思いで魔法局にいたと!)
イレーネは全身を震わせて、目の前の辞令を睨みつけた。
赤毛のまとめ髪が怒りで揺れる。男爵家の令嬢として夜会に出ていた頃の面影は微塵も感じさせない。まるで瓶底のような分厚いレンズの下、黒や藍の入り交じった瞳は燃えていた。
次の者に守護竜の『宮移し』の任を命ずる。
第一席 レオンハルト・シェーンベルク
第二席 イレーネ・ヘルダーリン
その下にも魔法使いの名前は続いているが、彼女の視界には入らない。
国王が閲覧し認証した証明である百合の紋章付き。どこからどう見ても公的文書。
(どうして、どうしてわたくしが第二席なのっ!)
局長室に乗り込んでやろうという思いはすぐに消えた。
この瞬間、最も聞きたくない声が近づいてきたからだ。イレーネはすばやく物陰に隠れるとじっと身を潜めた。
「レオンハルト様、すご~い」
「辞令、拝見しました。宮移しの統括に決まったんですねぇ!」
「当然の流れだ。エレガントに遂行してみせるとも」
イレーネと同じミルクティー色の制服姿の女たちが、中央の男を褒めそやす。
レオンハルト・シェーンベルク。
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