ポー

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ポー

 ボクの名前は友永歩(ともながアユム)。  決してポーと言う名前ではない。  来年、二十歳になる大学生だ。  生まれてからずっと彼女なし。当然、彼女いない歴、年齢と一緒だ。  しかも自他ともに認める厨二病だ。アイドルとアニメの推し活にすべてを捧げていた。  しかしボクは今、最悪の状態だ。  ボクの推し活をしていた地下アイドル『ワンナイト・シンデレラ』の人気メンバー・エリカのスキャンダルが発覚したのだ。  ボクたちファンの間では騒然となった。  それまでエリカは清純派アイドルとしてボクたちヲタから熱狂的な支持を集めていた。  ルックス、キャラクターともに申し分ない。  当たり前だがボクたちヲタは彼氏なんていないと思っていた。  けれども、その清純派アイドル、エリカが信じられない事にイケメンの担当マネージャーとの交際していた事が発覚したのだ。  しかもただの交際ではない。  二年前からの付き合いで、なんとこのほど『出来ちゃった結婚』を発表した。  まさに驚天動地だ。『OH! マイゴッド』と言えるだろう。  厨二病のボクはショックのあまり寝込む寸前だ。  これまでエリカの推し活に()ぎ込んだ額は優に百万は越えるだろう。少ない小遣いやお年玉の大半を(つい)やした。  それをすべてドブに捨てたみたいな感じだ。  エリカの衝撃の告白からボクは何も出来ずリビングのソファでボーッと過ごしていた。  寝転んだまま、なにもする気が起きない。  スマホの画面を見ていても目が(うつ)ろだ。  極度の虚無感に(さいな)まれた。  しかしこれは嵐の前の静けさと言って良いだろう。 『ピンポーン♪ ピンポーン』  その時、インターフォンのチャイムとともに彼女が現れたのだ。  いつからインターフォンが鳴り響いていたのだろう。  ボクは夢遊病者のように玄関ドアを開けた。  そこにはアイドルみたいな美少女が立っていた。  服装からすると配達員なのだろうか。 「フフゥン、おめでとうございます」  彼女は小悪魔みたいに微笑んだ。 「はァ、どうも?」  ボクは条件反射で挨拶をした。
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