怪人が当たりました

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怪人が当たりました

 夏休み直前、最後の休日だ。  今日も()だるような暑さと言って良い。  その日、いきなりボクの家にデリバリーの配達員が現れた。  目の覚めるような美少女だ。 「フフゥン、おめでとうございます」  彼女は小悪魔みたいに微笑んだ。  とても愛想の良い美少女だ。歳はボクと変わらないようだ。女子大生くらいだろうか。このままアイドルにしたいくらい可愛らしい。 「はァ、どうも」  ボクは条件反射で挨拶をした。  配達員らしき彼女が『おめでとう』と言うくらいなので、なにか当選したようだ。  すぐさまボクは最近、応募したモノがあったか思いを巡らせた。だがまったく覚えがない。  ふと彼女の胸元を見るとネームプレートには『尻野(シリの)アンナ』と書かれてあった。 「ううゥン……」  美少女なのに少し残念な名前だ。 「フフゥン、あなたが友永ポー様ですね」  尻野アンナは妖しく目を光らせて笑みを浮かべた。 「はァ、ポーじゃなくってアユムですけど」  ボクの名前は友永アユムだ。歩くと書いてアユムと読んだ。 「いえ、お構いなく。ポー様」 「いやいや、構いますよ。友永歩(ともながアユム)ですから」 「ハイ、このたびポー様には怪人の詰め合わせセット、一年分が当たりました!」  ニコやかだが、その発言は常軌を逸していた。 「はァ?」  一瞬、我が耳を疑った。 「怪人の詰め合わせセットですか?」  何を言っているのだろう。  ドッキリなのだろうか。  いったい怪人の詰め合わせを一年分貰って何になるんだ。  もしかしたら怪人のフィギュアか何かをくれるのだろうか。 「では、こちらに受け取りのサインをお願いします」 「いやいや、受け取れませんよ。怪人の詰め合わせセットなんて……」  ボクは必死に両手を振って拒否した。  いったいなにを押しつける気なのだろう。  どう考えても怪人の詰め合わせなんて必要ない。
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