9人が本棚に入れています
本棚に追加
怪人が当たりました
夏休み直前、最後の休日だ。
今日も茹だるような暑さと言って良い。
その日、いきなりボクの家にデリバリーの配達員が現れた。
目の覚めるような美少女だ。
「フフゥン、おめでとうございます」
彼女は小悪魔みたいに微笑んだ。
とても愛想の良い美少女だ。歳はボクと変わらないようだ。女子大生くらいだろうか。このままアイドルにしたいくらい可愛らしい。
「はァ、どうも」
ボクは条件反射で挨拶をした。
配達員らしき彼女が『おめでとう』と言うくらいなので、なにか当選したようだ。
すぐさまボクは最近、応募したモノがあったか思いを巡らせた。だがまったく覚えがない。
ふと彼女の胸元を見るとネームプレートには『尻野アンナ』と書かれてあった。
「ううゥン……」
美少女なのに少し残念な名前だ。
「フフゥン、あなたが友永ポー様ですね」
尻野アンナは妖しく目を光らせて笑みを浮かべた。
「はァ、ポーじゃなくってアユムですけど」
ボクの名前は友永アユムだ。歩くと書いてアユムと読んだ。
「いえ、お構いなく。ポー様」
「いやいや、構いますよ。友永歩ですから」
「ハイ、このたびポー様には怪人の詰め合わせセット、一年分が当たりました!」
ニコやかだが、その発言は常軌を逸していた。
「はァ?」
一瞬、我が耳を疑った。
「怪人の詰め合わせセットですか?」
何を言っているのだろう。
ドッキリなのだろうか。
いったい怪人の詰め合わせを一年分貰って何になるんだ。
もしかしたら怪人のフィギュアか何かをくれるのだろうか。
「では、こちらに受け取りのサインをお願いします」
「いやいや、受け取れませんよ。怪人の詰め合わせセットなんて……」
ボクは必死に両手を振って拒否した。
いったいなにを押しつける気なのだろう。
どう考えても怪人の詰め合わせなんて必要ない。
最初のコメントを投稿しよう!