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ティランちゃん
「あ、ご心配なく。怪人と言っても試作品のポンコツなので何の気兼ねもいりません」
また尻野アンナは笑みを浮かべた。
「えェッ、ポンコツなんですか?」
だがポンコツなら余計いらないんじゃないのか。
「ハイ、怒ると暴れて火を吹くタイプの怪人なので手がつけられません」
「ううゥ……、危ないな。どんなポンコツな怪人なんですか?」
「なので廃棄するところを今回、特別に賞品としてリユースしてポー様のような絶望的にモテないヲタク様にお配りしております」
顔に似合わず毒舌だ。
「絶望的にモテないって。なんて言い方なんですか。どんなリユースなんです。たんに失敗作をヲタに押しつけてるだけでしょ」
「決してそのようなことはありません。さァこちらにサインを」
「なんですか。サインって。いりませんよ。そんなポンコツ怪人なんて。どうぞ、持って帰ってください」
「そんなことを言わず、ではどうぞ。試しに実物のポンコツ怪人をご覧ください」
「え、見たくないですよ。そんな怪人なんか。ポンコツなんでしょ。ただの粗大ゴミじゃないですか。もう良いですか?」
ボクは帰ってもらおうと懸命だ。
たとえ賞品だとしても怪人なんて貰いたくない。
「いえ、決して損はさせません。ひと目見てもらえば、ウチの怪人の良さがわかりますから」
「わからないですよ。だってその怪人はポンコツなんだから」
「ええェ、こちらが最新式のポンコツ怪人ですので」
「最新式のポンコツって、何なんですか?」
まったくワケがわからない。
「こちらがティラノサウルスをモチーフにしたティランです」
尻野アンナが紹介したのは可愛らしい美少女だ。横からピンクのパーカーを身にまとった美少女が現れた。
「えェ、ティラン?」
まさか、この子が怪人なのか。
一見すると、美少女アイドルのようにしか見えない。
「こんにちは。ティランちゃんでェーす」
まるで初々しい新人アイドルのような挨拶だ。
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