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ポンコツ怪人
「こんにちは。ティランちゃんでェーす!」
まるで初々しい新人アイドルみたいな挨拶だ。お茶目にキュートなポーズを取ってみせた。
エントランスでクルクルとダンスを踊った。絶対領域の太ももがまぶしい。
さらに圧倒的な巨乳だ。ダンスを舞うたびにボクの目の前で揺れた。
「ゴックン」思わず生ツバを飲み込んだ。
とても怪人とは思えない華麗なダンス・パフォーマンスだ。
「ご覧ください。この見事なボディライン。
ポー様のような巨乳好きには堪らないダイナマイト・ボディになっております」
配達員の尻野アンナが美少女怪人を紹介した。
「いやァ別に、巨乳好きってワケじゃないけど」
ボクは照れて視線を逸らせた。頬が火照って熱く感じた。ボクは厨二病なので美少女をまともに見れない。
「いえッ、ポー様は無類のオッパイ星人としてネット界隈では有名ですので」
尻野アンナは意味深に笑みを浮かべた。
「あのですねェ。ボクはオッパイ星人じゃありませんよ」
それにしてもさっきから失敬な女性だ。
だが、もちろん巨乳が嫌いなわけではない。むしろ好きなタイプかもしれない。
何しろボクは厨二病の真っ只中だ。
こんな巨乳美少女を間近にして動揺しない厨二病男子はいないだろう。
「ほらァ、見た目だけではございません。こちらの触り心地は絹のように、なめらかで弾力性に富んだ逸品になっております」
尻野アンナは美少女怪人の二の腕をプニプニと触ってみせた。
深夜の通販番組みたいなプレゼンテーションだ。
「いやァ、確かにキュートだけど」
間違いなくボク好みの美少女だ。怪人でなければファンになっているだろう。
すっかり出来ちゃった結婚をしたエリカのことは脳裏から消えてしまった。
ワクワクして、さっきまで落ち込んでいた事が嘘のようだ。
「ハイ、こちらはポー様みたいなアイドルヲタには堪らない賞品になっております」
「いやいやァ、でもポンコツ怪人なんでしょ」
「ティランちゃんはポンコツじゃないわ。ちゃんと特技だってあるのよ」
「えェッ特技って。何ができるの?」
「フフゥン、ティランちゃんは自由自在に火だって吹けるんだから」
美少女のティランは大きく息を吸って火を吹こうとした。
「いやいやァ、ちょっとちょっと待ってください。火なんか吹くなよ。家の玄関先で!」
慌ててボクはストップをかけた。
やはり危ないポンコツ怪人だ。
玄関先のエントランスで火を吹かれては堪らない。
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