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怪人シェアハウス
こうしてボクと美少女怪人ティランとの同居生活が始まった。
怪人とのシェアハウスなんて前代未聞だろう。
ボクの両親はすでに亡くなっていた。
ひとりっ子なので兄弟もいない。
ボクは一人暮らしなので他に気兼ねはない。
屋敷は古いが無駄に広いので、いくつか空き部屋もあった。彼女とシェアハウスしても十分余裕はあるだろう。
夜中に騒がなければ近所に迷惑をかける事もないはずだ。
しかし家ではペットも飼ったことがないので心配だ。
それに恐竜怪人は怒ると暴れて火を吹くらしいので、何ごとも穏便に済ませなければならない。
「まずトイレは、ここね」
はじめにボクはトイレの場所を教えた。
「わかったわ。今日からティランちゃんだけのテリトリーね」
自慢げに胸を張ってうなずいた。
「いやいや、もちろんボクも使うからキミだけのテリトリーってワケじゃないけど」
「ふぅん、じゃァ勝った方のテリトリーよ。覚悟しなさい。得意のフリッカージャブをお見舞いしてあげるわ」
ティランは拳を握りしめファイティングポーズを取った。
片手はダラーンと下げて、まるで伝説のボクサー、トーマス・ハーンズみたいなヒットマンスタイルだ。さすがに怪人だけあって構えも様になっていた。
「シュッシュッシュッ」
ムチのようにしなやかなジャブが空を切って放たれた。
「ちょッちょっと待って。待ってくれよ」
すかさずボクは後ずさりし距離を取った。
こんな切れ味鋭いジャブを食らったら顔じゅうアザだらけだ。
だいたい美少女と喧嘩する気はない。
「えッ、待たないわ。ティランちゃんは待たされる事と、濡れ場で脱がない女優が大嫌いなタイプの怪人なのよ」
「いやいや、どんなタイプの怪人ですか。わかりました。今からティランちゃんだけのテリトリーですから、ご自由に使ってください」
ボクは見つからないように隠れて使わせてもらおう。
「フフゥン、残念ね。得意のフリッカージャブをお見舞いしようとしたのに」
ティランは満足そうに微笑んだ。
「はァ、冗談じゃないですよ」
彼女を怒らせて得意のフリッカージャブをお見舞いされたら堪らない。
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