ティラン

1/1
前へ
/11ページ
次へ

ティラン

「わかったから怒らないでくれよ。あとでティランの好きな鳥のササミを買って上げるから」 「マジで、ラッキー!」  すぐに機嫌を直してくれた。  なんとも現金な怪人だ。鳥のササミで買収できればお安いご用だ。  さっそくボクは公園の近くの肉屋で注文した。 「ええェッと、鳥のササミを三百グラムね」 「ふぅん足りないよ。ポー。五十キロくらいバァーンって買ってよ」  ティランはボクの肩に両手を乗せ足をバタバタさせた。 「あのなァ、そんなに大量に買えるワケねえェーだろォ。だいたい鳥のササミを五十キロも買う金なんかないよ。東京サファリパークじゃないんだから」 「何よ。ケチんボねえェ。だから彼女が出来ないのよ」 「ほっとけよ。だいたい五十キロの肉なんか食えるのか?」 「もちろんよ。牛一頭くらいなら軽くペロリよ」  長い舌でペロッと唇を舐めた。 「どんな怪獣ですか?」  本当なのか。牛一頭食べるとしたら食費にいくら掛かるのだろう。軽くめまいがしてきそうだ。  ようやく家へ帰ってきた。 「ふぅ」  ほんの少し公園まで散歩をしただけなのに汗だくだ。  その時、上空から大きな鳥のようなモノが飛んできた。頭の上からバサバサッと羽ばたく音がした。 「えェ?」思わずボクは首をすくめ、振り仰いだ。  見たこともない怪鳥が上空を舞っていた。  まさか、都会にこんな巨大な怪鳥が現れるのか。  いや、しかし怪鳥ではない。怪人だ。しかもよく見ると美少女の翼竜怪人だ。 「よォ、ティラン!」  その翼竜怪人はボクたちの前に舞い降りて挨拶をした。 「あップテラちゃん。いらっしゃい。よく来たね」  すぐさま二人はハグをした。二人は旧知の仲みたいだ。 「な、なにィ、プテラちゃんだってェ?」  ボクだけが蚊帳の外だ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加