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親から事業を引き継いだ私の父には商才がなかった。
雪だるま式に増えた借金を抱えて途方に暮れていた私たち家族の前に、突然大企業の御曹司であるあの男が現れ、借金の肩代わりに私と結婚したいと申し出た。
私は両親のために承諾した。
救い主である男を真心をもって愛そうと思った私に、男は容赦なく暴露した。
この結婚は復讐のためなのだと。
昔、男の父は私の父の下で働いていたが、事業失敗の責任を問われて解雇された。
仕えていた社長からの無体な仕打ちにより男の父は心を病み家族は困窮した。
男はその才能を買われて会社経営をしていた親戚の養子となったが、家族と引き離され後継者になるためだけに課せられた生活は、窮屈で過酷なものだったという。
だとしたら、なぜ恨みがある私の家のために莫大な金を払うのだろう。
その疑問は男と体を重ねてすぐ解決した。
彼は私を横暴に扱った。まだ男性経験がなかった私に好きなように自分という男を擦り込んで、欲望のままに支配した。
奴隷のように夫婦生活を強いられてやっと私は気づいた。この男が復讐したかったのは父ではなく私なのだと。
そして私は幼い頃にこの男とすでに会っていたのだということも思い出した。
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