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※
「手をつけ」
冷酷な命令に私はおののいた。
「うしろからされるのが好きなんだろう」
「い、いやです」
私がボタンが外れたシャツを握り締めてかぶりを振ると、男は冷ややかに笑った。
「いや? 拒むことが許される立場だと思っているのか?」
小さく唇をかみしめる。男に肩代わりしてもらう借金はまだ残っているから従わねばならない。たとえ専属秘書も強いられている私が昼間であるにもかかわらず身体の奉仕をしなくてはならなくてもだ。
私はのろのろとうしろを向いて取締役用の高級感のあるデスクに手をつき、下ろしている長い髪を片方の肩にまとめて流した。男がこの体位でするときはこうするのを望むからだ。
取締役の専用オフィスの外からは、社員の声や歩く音が聞こえる。
「大切な打ち合わせをするからこの時間には入室するな」と伝えているためこの部屋に社員が来ることはないが、最中の音や声で気づかれないとは限らない。
だから私はここで抱かれるのが心底嫌だった。だが男は私の嫌がることこそ好んで強いてきた。
むきだしになった首筋に男の唇が触れる。ついばむようにキスをしながら両手で私を抱きしめ、ボタンが外れたシャツの中に手を伸ばす。
ただそれだけの動きなのに男に慣れきってしまった私の体は過敏に反応する。さらに胸の先端をこりこりといじられて、なおさら疼いてしまう。
愛撫される快感に耐えるために唇を硬く引き結ぶ。だが片方はこねるようにつままれ、その刺激で硬く突起したもう片方は指の腹でゆっくりとなぞられ、ふたつの異なる心地よさに襲われてその抵抗もままならなくなる。
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