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甘美な交響曲にレトロ調の家具に食器。 空間全てが落ち着いた雰囲気が人気な、駅から徒歩で10分の場所に位置する喫茶店。 いつもどおり窓際の席に向かい合って座れば、女性(かのじょ)は何が嬉しいのか笑いながら顔を覗き込んだ。 「どうしたの朱翔(あやと)ってば。最近ずっと上の空じゃない。仕事で上手くいかないの? それとも彼女さん?」 明るい茶髪の髪が空調によって吹かれるそんな姿に店内中の客は夢中になっていた。 遠目から見てもわかる、可憐な姿の彼女こそが中学の同級生の小瀬野 茉央(まお)だ。 「そうかよ。どっちもじゃね? 仕事も残業ばっかだし、彼女とは疎遠になりつつあるし。…てか、お前が彼女との関係を壊しにきてんだろうがよ」 「そんな酷い言い方しないでよ~、朱翔。久しぶりに再会したんだしいいじゃない? 少しくらい会って話すくらい。彼女さん、そんなに束縛するの?」 「別に。何とも言ってねえよ」 やっぱ、そういう冷たい言い方好き、なんて頬を緩ませ小瀬野は言った。 半年前の同窓会で再会してから気付けば俺は小瀬野といる時間が増えて行った。特別な感情を抱いているわけでもなく、自分でも理由も分からずに時間を共にしてる。 「じゃあ、言っちゃおうかな…」 オレンジジュースをストローでかき混ぜながら呟いた言葉に、さっきまで俯いていた俺は顔を上げる。 「は? 何を?」 眉間にしわを寄せ彼女を瞳を見つめると、無邪気な少女みたいに小首を傾げ口を開いた。 「私ね、ずっと好きだったんだよ。朱翔のこと」
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