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「―――だって朱翔が好きなのは、雅樂さんでしょう?」
魅惑の瞳が俺を見つめる。
甘く溶けたその瞳に吸い込まれるように俺は口を開いた。
「……違う。俺が好きなのは茉央だ」
そう告げると、体が宙に浮いた気分になった。
さっきまで繋がれていた鎖がみるみるうちにほどけていく。心も、体も軽くなってようやく息を吸えるとさえ感じた。正直、自分でも今の感情が信じられなかった。
「嘘……でしょ? 私……ずっと―――」
「ごめんな、ずっと嘘ついて。今ようやく素直になれた」
「夢みたい、本当なの? 朱翔」
嬉し涙を浮かべながら彼女は未だに受け入れられない現実を喜んでいた。それを見て自然とほおが緩む自分が居たのも、雅樂への罪悪感一つも感じないのも紛れもない事実だった。
「俺は確かに雅樂に染まった。でも今はそうじゃない。お前の―――茉央の色に染まってる」
「朱翔っ―――‼」
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