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少し高台にある3階建てレンガ造りのアパートは、確か社会人2年目の頃に雅樂と引っ越してきたのを憶えている。
俺達が選んだのは3階の角部屋で、陽当たりも良く、窓からは街一帯を見下ろせる見晴らしのいい部屋だ。
どんなに疲れていても、嫌な事があっても、ここに帰ってこれば全てがどうにかなる気がした。
扉を開ければ、彼女が微笑んで「おかえり」と癒しのことばをくれる。それが愛おしくて仕方がなかったはずなのに今は家に帰りたいとすら感じなくなっていた。
「でも……これがもう、最後だよな……」
玄関の前で立ち止まり、そう呟く。
そう思うと何だか重い足取りも嘘みたいに、気づいたら玄関の扉を開けていた。
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