虚実八百

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 翌朝、エイプリルフールが終わったので、トモヤは昨日言った嘘をバラそうと思った。テーブル席に座り、朝食をとりながら母親に言った。 「お母さん」 「んー、なぁに?」 「昨日、タルマが買えなくなるって言ったよね?」 「あー、そんなこと言ってたわね。昨日、近所の奥さんとも怖いわねって話したわ」 「えっ」  トモヤはそれを聞き、嘘だと言いづらくなった。もし嘘だと知れば、母親は奥さんに謝らなければならない。  トモヤは怒られたくなくて嘘だと言い出せなくなった。 「うん、僕も怖いと思うよ」 「そうね。今のうちにタルマをたくさん買っておこうかしら」 「うん……」  会話はそれで断ち切れた。トモヤはもやもやした気持ちを抱えながら学校に行った。
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