虚実八百

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 さて、トモヤが言った嘘は母親から近所の奥さんに伝わり、それが奥さんの旦那と娘、その二人から会社の社員と学校の生徒へと伝わっていった。嘘が広がる頃にはエイプリルフールは終わっていたので、皆その嘘を信じてしまった。 「タルマが買えなくなる」という嘘はいつしかネットにも流され、じわじわと拡散していった。拡散するごとに嘘の形はどんどん変わっていき、最初は「地球温暖化の影響でタルマが買えなくなる」だったのが、「温暖化の影響でタルマの苗が育たなくなる」「タルマの苗が育たなくなるのは、植物性の伝染病が広がるから」「タルマが伝染病にかかっている」「伝染病にかかっているのは日本のタルマではなくタルマーダ国のタルマ」「タルマーダ国では伝染病が蔓延(まんえん)している」「タルマーダ国ではタルマを育てる人が伝染病にかかって減少し、深刻なタルマ不足になっている」「タルマを食べるとガンになる」などなど、次々と新たな嘘を産み出しながら拡散した。  ネットには面白半分でテキトーに思いついた嘘を書き込む者や、注目を浴びたいために元の情報を誇張する者、また自分の憶測を事実かのように書き込む者が多かったため、タルマに関する嘘はほとんど原型を留めていないほどに歪んでいった。
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