虚実八百

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 その頃、タルマに関する悪い噂はマスコミに取り上げられるほど話題になり、いつしかこの一件は「タルマ騒動」と呼ばれていた。そしてある報道番組の中で、騒動に巻き込まれている多留間社長へのインタビューを放送することになった。  その報道番組の名前は『半分報道』、放送時間の半分は報道に使い、残る半分は新商品の宣伝に使うという番組だった。  放送当日、番組では社長のインタビュー映像を流す前に、まずはキャスターの白田学(しろたまなぶ)がタルマ騒動の解説を行った。それを聞いたコメンテーターの本条誠(ほんじょうまこと)はこう言った。 「今回のタルマ騒動は全部くだらないネットの嘘が原因ですよ。エイプリルフールも近いですし、誰かがテキトーに考えた嘘がここまで騒動を大きくしたんでしょう。だって、地球温暖化が原因でタルマが()れなくなるなんてあり得ません。たしかにタルマの原産国であるタルマーダ国は寒冷地ですが、国産のタルマは日本の気候に耐えられるよう品種改良してるはずです。たとえ温暖化の影響で平均気温が1、2度上がったところでタルマが不作になるわけがない。それからタルマーダ国で伝染病が広まってるだの言ってますが、本当にそんなことが起こっているなら真っ先にテレビや新聞が取り上げるでしょう。どうして一番先に取り上げるのがネットなんですか。ネットの嘘に騙されたらダメですよ」  白田は本条のコメントに相槌(あいづち)を打った後、カメラに向き直って言った。 「さて、真相はどうなのでしょうか。半分報道のスタッフがタルマ社の社長に独占インタビューを行いました。どうぞ」
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