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「美波(みなみ)ちゃん、お母さんが傘を持って来てるよ」
二時限目の休み時間に友達の真知子(まちこ)ちゃんに言われた。
その日の朝は綺麗な青空だったのに、急に雨が降り出したのだ。
「やだ、やだ、やだーっ!」
あたしは机を蹴飛ばして席から飛びだして廊下へと走った。
そしたら真知子ちゃんが後ろで声を出して笑った。
「四月一日、エイプリルフールのウソだよ、美波ちゃん!」
「真知子ちゃーん、うわあぁっ!」
あたしは怒るよりもホッとして、むしろ喜んだ。
母が学校に来るなんて、とんでもない!
絶対にイヤだ!
なぜかって?
母はいつも変な柄の派手な服を着てるからだ。
一緒に歩くのが恥ずかしいくらいに......。
だから授業参観の報せのプリントが来ると、あたしは親に見せない。
母には来てほしくないからだ。
小学四年生。
低学年と高学年のあいだの半端な年齢。
だけどお洒落に憧れる年頃。
あたしは、死にたいくらいに母のセンスの無さが苦手だった。
嫌いなピーマンを山盛り食べたら、母をお洒落にしてくれますか?
神様に、そう祈りたい気持ちだった。
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