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医師と看護師がきて、あたしの身体を診察していく。
あたしはボンヤリと母のことを考えていた。
『子育てなら負けない!』
そう、ホントに、その通り。
どんなに忙しくても、ちゃんと朝ご飯と夕ご飯をつくってくれる。
それがとってもおいしい。
土日だって家のことを全部、やってる。
あたしは、見るに見かねて洗濯係になった。
ときに公園とか遊園地に連れていってくれて、そういうとき食べれる
お弁当も、すごくおいしい。
怒ることもあるけれど、それはいつもあたしが悪いときだって、わかる。
それに声を荒げて怒鳴ったりしない。
そして褒めるときは、こっちが照れちゃうくらい。
そっか、あたし、お母さんのこと苦手じゃないじゃん。
たったひとつの『派手な服を着るのがイヤ』って、それだけ。
そこばかりこだわってたんだ。
お母さん。
どんな気持ちで、いま、黒い服を着てるの?
服装が派手なことが原因であたしが倒れて。
それでショックを受けて、どんな気持ちで家まで着替えに戻ったの?
お母さん......。
とってもショックだったよね。
「山上さん、美波ちゃん、ごめんなさい......」
おまじないのウソをついた吉原くんが謝ってくれた。
「いいよ、あたしが変なとこで必死になりすぎてたんだよ。
ホントだよ、エイプリルフィールのウソじゃないよ」
あたしは正直に、そう言えた。
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