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旅先で、目的地までの切符を買った。
列車に乗り、しばらく車窓の風景を楽しんでいたが、同じような田園風景がひたすら続くため、だんだんと眠くなってきた。
幸いにも、目的地はこの列車の終点の駅だ。眠っても乗り過ごすことはないだろう。
その安心感で眠りについたのだが、起きてみたら周りの雰囲気がどうにも妙だった。
駅の様子や垣間見える外の風景が、ネットで調べたものとまるで違う。
でも確かに、ここまでの切符を買ったんだ。列車も間違えていないし…とりあえず降りるとするか。
* * *
最近、自動販売の券売機の調子が悪くて、ちょくちょく文字がかすれてしまう。
不幸中の幸いで、同じ路線の駅名の一つ一つはまるで違うから、ちょっと文字が読み辛い程度で行先を間違えることはない。
それでも、文字がかすれた偶然で、切符に記された地名がとんでもないものになることがある。
この切符なんて、二文字の駅名の一文字目が、人偏だけ残って印字されているから、ぱっと見『イ世界』と読めてしまう。
さすがに、読めたからといってそんな場所に行く訳ではないけれど、乗車客は切符を見てぎょっとするだろな。
駅名…完
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