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すると茜は、更に強い口調で聞いてくる。
「どうして⁈ こんなにも友人が困っていて、お願いしているのに、聞いてくれないの?」
悟美は困った様子で、苦笑いしながら何とかその場を取り繕《つくろ》おうとした。
「いや、そういう意味じゃなくて・・。なんていうか、ほら、こういうのは、自分自身で手渡した方が良い気がして・・・。」
「そんなはずないじゃん! 何、誤魔化してるの⁈ 悟美なんて、普段は友達面してるだけで、本当に困った時には、何もしてくれないんだね!」
一気に悟美の声を払拭するかのように、茜が強く言い放つ。
困惑しながら、悟美が言い返した。
「そんな⁈ 私はただ・・。」
「もうイイよ‼︎ 悟美なんて‼︎ もう何も頼まないし、友達とも思わないよ‼︎」
激しく激情した茜は、大声で叫んで、そのまま立ち去っていく。
「ちょっと・・・・茜。待っ・・・。」
そんな悟美の呼び止める声は虚しく、届かなかった。
その後、学校にいる間、茜は話しかけてさえこなかったし、悟美自身も何と言って話かければ良いのか分からず、二人の仲は遠くなるばかりに感じる。
悟美は、遠目に茜を見ていたり、ずっと言われた事の言葉を頭の中で思い出し、徐々に自分へ罪悪感を募らせていった。
そして、茜がいないだけで、こんなにも孤独な自分自身に気が付いたのだ。
もちろん、その日の下校時、悟美は一人ぼっちで、自転車を漕ぐ足にも、どこか力がなく、寂しさを背中に背負い込んでいるようだった。
「私が、悪かったのかなぁ。」
そんな事をポツリと小さく呟き、後悔ばかりが押し寄せてくる。
そうして、ふと父・悟から届いた手紙の事も思い出した。
—————
『悟美へ。
一、今度の日曜日。友人の茜ちゃんの言う通りに協力して、村上くんとの仲をうまく、繋げる事。』
—————
悟美は、溜息混じりに、迷いながら呟く。
「・・・あの、お父さんからの手紙の通りにすれば良かったの? でも・・それじゃあ、私の想いはどうなるのよ。」
いつもより時間がかかって、家に辿り着いた悟美は、活気なく玄関へ入ると、母・純が出迎えてくれた。
「おかえり〜。」
悟美は何も答えず、魂の抜けた廃人のように、フラフラと俯きながら、そのまま二階へと上がっていく。
「・・・? どうしたのよ。」
純は首を傾げながら、そのままリビングへと戻った。
前へと歩くのにも自分自身の体は、まるで鉛の入った鎧のように重く、そうして憂鬱に感じる。
悟美は今、宙に浮かんだように、部屋のベッドへと全身を預け倒れ込んでいた。
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