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まさか、私が手助けしてあげなかったから、茜自身で何とかして手紙を渡した・・?
そして今日、村上くんとデート⁇
え?
もしかして、そんな事もあり得るだろうか。
茜なら、案外あり得るのかもしれない。
いざという時には、びっくりするような行動力をみせるからだ。
茜とは、ほぼ数年間、毎日のように学校生活で一緒にいたり、それ以外でも連絡を取り合って話をしたりと、多く過ごしてきたのでなんとなく性格が分かる。
悟美は、自分の部屋のベッドに寝転んだ。
今度は、村上の事が頭に浮かんでくる。
ん?
いや、そうとは限らないかもしれない。
二人がデートなんて、難しいかも。
たとえ、茜が勇気を振り絞って、村上くんへ手紙を渡したとしても、断られる可能性だってある。
村上くんは、サッカー部だし。
こんな日曜日にも、一生懸命に練習しているかもしれない。
それに村上くんは今、お婆ちゃんが入院中だから、お見舞いやら何やらで、大変なはずなのだ。
悟美が、自分の部屋の無機質な天井を眺めていると、色々な想像が膨らんでくる。
大袈裟《おおげさ》にいうと、まるで名探偵になった気分で、様々なパターンを深読みしていくのだ。
徐《おもむろ》にベッドから起き上がった悟美は、いつものようにタロットカードを取り出して手に取る。
シャッ。
シャッ、シャッ。
シャッ・・、シャッ・・。
何かを頭の中で念じながら、何十枚ものタロットカードをシャッフルして、順に捲《めく》られていく音。
カサッ。
シャッ・・、シャッ・・・。
悟美は真剣な表情で、タロットカードをシャッフルしては並べていった。
持っているカードをまた一枚、表を返して床に置く。
カードのイラストには、『月』と書かれていて、それが正位置の状態であった。
悟美は、深い溜息をつく。
「・・・もう。本当に分からない。」
精も根も尽き果てた、といった感じで、カードを床にばら撒いて、再び悟美はベッドへと倒れ込んだ。
その時、階下の玄関で物音がして、
「ただいま〜。」
という母の声がする。
悟美は、ふとテーブルの上の置き時計を見てみると、夕方6時になろうとしていた。
「もう、こんな時間かあ。」
そんな事を呟いていると、下のリビングの方から突然、叫び声が聞こえる。
「きゃっ!」
確かに、母・純の叫び声ではあるが、一体何があったのか。
悟美は、恐る恐る階段を降りていった。
キッチンで、ゴキブリでも出たのだろうか。
ドアを開けて、リビングに入った悟美が目にしたのは、昼間置いていた薔薇の花束を手にした純がそこにいた。
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