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白い封筒を手に取った悟美は、まるで待ち望んでいたかのようにそれを開いて、中から手紙を取り出す。
いつものように、その手紙を目だけで追いながら読んでいった。
書かれていた内容は・・・。
『悟美へ。
一、今日は、友人の茜ちゃんと楽しんでおいで。そして、その時に見た物・見た事を全て納得して受け入れなさい。』
じっと黙りこんだまま、悟美は何度も目で手紙の内容を読み返す。
この意味を理解しようとしていたのだ。
「ん? 見た物・・見た事? ・・・全てを納得して、受け入れなさい・・・。何コレ?」
その様子をじっと見ていた純が尋ねる。
「どう? 意味わかる? 私もすぐに読んでみたけど。悟美への内容だったから。」
悟美は、手紙を持ったまま首を傾げていた。
「いやあ〜、いまいち謎解きみたいな・・。簡単な事を書いてるんだけど。それって、どういう事って感じ。」
「悟美がピンとこないなら、私は尚更、分からないわね。」
考え込む仕草をしていた悟美が、なんとなく思いついたような言葉を発する。
「う〜ん。あ、もしかして今日、茜と映画に行くんだから、その見た内容を全て納得して受け入れろって事なのかな。いや、よく分からない。」
難題なクイズでも解き明かしているかのように、あれやこれやと考えていたが、すると突然、玄関のブザーが鳴った。
「あ、茜だ。」
そう言って悟美は、手に持っていた手紙をそのままテーブルへ置いて、慌てて玄関へと向かう。
ドアを開けると、案の定そこには茜が立っていた。
茜は、臙脂《えんじ》色のサロペットパンツをオシャレに着こなしている。
「お母さん。じゃあ行ってくるね〜。」
悟美が、サンダルを履きながら振り返って伝えた。
「気をつけてね〜。」
家の奥から、純の返事が返ってくる。
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