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悟美は、食い下がるようにして、話の続きを聞きたそうに詰め寄った。
「で、その特殊な能力って?」
真面目な顔になり、純が告げる。
「お父さんは、『未来予見』っていう能力があったのよ。」
「『未来予見』?・・・」
「そう。『未来予見』というのは、つまり未来が見える。これから起こる出来事が見えていたのよ。」
「えっ〜! そんな事って・・。」
驚きのあまり、悟美が声を張り上げた。
「そんな、オカルト的な事、信じない人が多いし、もちろん私も最初聞いた時は、冗談か嘘に決まっている、と思っていたわ。」
「それって・・・。えぇっ⁈ 本当の話⁈ まだ信じられないんだけど。」
疑惑で一杯の悟美を見ながら、純が説明する。
「世間には、まだまだ信じられない事がたくさんあって、世の中には特殊な能力をもっている人たちが存在するのよ。ほら、例えば『前世が見える人』や『他人の心が読める人』。あと『亡くなった人の霊が見える人』も、その一つだし。」
驚きを隠せずに、黙って話を聞いていた悟美が、やっと何かを思いついて話しはじめた。
「そう考えると・・・。お父さんが、その未来を見透す力があったとして・・・。だとしたら、今まで送られてきた手紙も、悪戯とかじゃなく、現実味のある有効的なお告げって事になるんじゃない?」
「まあ、確かにそういう事になってくるわね。」
そう言いながら純が、手紙の収められているダンボール箱を見つめる。
「そんな冷静に答える事じゃなく、本当に凄い事だよね?」
悟美が、訴えるように言った。
「確かにそうなんだけど。さっきも話した通り、お父さんが生前に『未来予見』の力をもっていた事は事実よ。でも・・、亡くなった後もずっとこうして、手紙が送られてくるのは、納得がいかないし。果たして、これはお父さんが送ってきているのか、って疑問に思うのよ。」
「つまり、完全に信用するには、いまいち信憑性に欠けるって事?」
「だって、冷静に考えてみなさい。そりゃあ私だって最初は、お父さんからの手紙が届いた時には素直に嬉しかったわ。でも、次々と手紙が届くうちに、冷静になって考えてみたのよ。お父さんは、『未来予見』の能力はあったけど、『生き返る能力』とか『あの世から手紙を送りつけてくる能力』なんていうのは、なかったはずなの。そう考えると、手紙の送り主としては、疑問が残るわよね。」
悟美も、下を向いて考え込む表情になる。
「う〜ん。まあ確かに・・。そう言われてみれば、そうよね。」
その後、純が手を差し出して、悟美の持っていた幾つかの手紙を受け取り、またダンボール箱の中へと仕舞った。
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