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「まあ、これが誰からの手紙なのか、真実はまだ分かってないけど。宛名がお父さんの名前である以上、今はお父さんからの手紙だって事にして・・。それと、この手紙の内容自体が、今のところ何か悪質な事を目的とした事じゃないみたいだから。警察にも通報したりしないし。しばらく、このまま様子をみようと思うのよ。」
今すぐに解決しない事柄に、悟美自身も母の考えに同意するしかない。
「うん・・。それしかないよね。」
するとそこで突然、純が立ち上がった。
「さ、そうと決まれば、お腹空いたから、夕飯にしましょ。」
「あ、うん・・。」
返事した悟美は、さっさとキッチンの方へ去っていく純の後ろ姿を見ながら、再びダンボール箱へと目を移す。
そうして、やむなくそのダンボール箱を、また元の収納スペースへと直し込んだ。
「今日、夕飯何〜?」
そう言いながら、悟美もキッチンへと移動する。
「今日は、冷やし中華と、コロッケよ。」
母娘の密かなる会話のひとときであった。
数日後。
学校から帰ってきた悟美は、自分の部屋にいた。
悟美は、いつものようにタロットカードを取り出して手に取る。
シャッ。
シャッ、シャッ。
シャッ・・、シャッ・・。
何かを頭の中で念じながら、何十枚ものタロットカードをシャッフルして、順に捲《めく》られていく音。
カサッ。
シャッ・・、シャッ・・・。
悟美は真剣な眼差しで、タロットカードをシャッフルしては並べていった。
持っているカードをまた一枚、表を返して床に置く。
カードのイラストには、『吊るされた男』と書かれていて、それが逆位置の状態であった。
どこか腑に落ちない顔をする悟美。
その後、部屋を出て階段を降り、一階のリビングへとやってくると、そのままソファへ腰を下ろした。
憂鬱な雰囲気の中、なんとなくリモコンでテレビの電源を入れる。
かと思ったら、すぐに立ち上がってキッチンの冷蔵庫へ向かうと、昨日買ってとっておいたシュークリームとマンゴージュースを取り出した。
そのシュークリームを早速開封しながら、再びソファへと座り込む。
その時テレビで、なにやら真面目な雰囲気の番組があっていて、どこかの偉い研究者らしき男性が話をしていた。
「え〜皆さん。今回の題材である『予測』についてですが。ご存知のように、『予測』する事は難しい。特に未来を『予測』する事は、非常に困難だと昔からよく言われてきました。」
ソファに座っている悟美は、パクパクとシュークリームを食べながら、番組の内容を見ている。
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