未来レター

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キッチンで苦笑いしながら、純が言葉を返す。 「残念〜。私はね、太らないの。これからの人生、まだまだ自分を磨いて、いつまでも綺麗で健康に生きていくのよ〜。」 「はあっ⁈ 何よ、それ〜。意味分かんな〜い。」 納得がいかず、不満気味に言う悟美。 その後も、機嫌良く鼻歌を歌いながら、純は夕食を作った。 ソファの方から時々、その様子を窺いながら、悟美は首を傾げるのだった。 「何? 臨時ボーナスでも出たのかな?」 母娘の二人だけの夜がふけていく。 それから数日後。 まだ日差しの暑い時間帯に、学校から帰ってきた悟美が、門扉を開けて中に入ったところだった。 家の前の通路に、白い高級な車が停車する。 鉄の門扉越しに、悟美がその停まった車を見ていると、なんと助手席から降りてきたのは、母親の純だった。 「えっ?」 助手席から降りた純は、すぐに運転手の方へと手を振りながら声をかける。 「今日は、ありがとう。」 その瞬間、悟美が開いた助手席ドアから、中の運転席側を覗くと、見えたのはあの蜂屋という男性であった。 「うん。こちらこそ、ありがとう。また連絡するよ。」 そんな事を、純へ言った後、蜂屋はすぐに悟美の姿へと視線を移して、 「あ、悟美ちゃん。こんにちは。」 と挨拶してくる。 悟美の方は、気まずそうにしながら声も出さずに、コクリと小さく頭だけ下げた。 程なくして、蜂屋は白い高級車とともに、走り去っていく。 残されたのは、門扉を挟んで外と中に立つ母娘であった。 「ただいま。」 何事もなかったかのように、声をかけてくる純。 そんな母親を、不審な目で見返す悟美。 純は遠慮なく、門扉を開けて中に入ってきた。 そうして、そのまま玄関口へと向かおうとしたので、悟美は追いかけるようにして声をかける。 「あの人と、出かけていたの?」 純は、きちんと振り返らずに、首だけ半分向けて答えた。 「あの人って言わないで。蜂屋さん、って言ったでしょ。」 悟美が徐々に目についたのは、普段では見た事もないようなオシャレなその格好である。 細い腕を意識的に出した袖口と、黒いミニスカートのワンピースを着ていて、後ろ髪はゴールドに輝くバレッタでまとめ、耳には珍しくイヤリングを付けていた。 そうして、そのままバッグから家の鍵を取り出した純は、玄関を開けようとする。 「私は、あの人の事、嫌だって言ったよね?」 大きく玄関ドアを開けた純が、体を半分振り返らせて言った。 「どうして? 蜂屋さんは、凄く優しくて、良い人なのよ。」 不満そうに玄関前に立っている悟美。
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