未来レター

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「悟美が色々心配してくれるのは、有り難いけど。これは大人の事情だし。あなたにはまだ、分からない事なのよ。それに今の悟美は、そんは事を考えるより、しっかり勉強をする時期なの。そっちに集中してほしいわ。」 溜息をついた後、悟美はソファの方へと移動し、ゆっくりと腰をおろした。 頭の中を色々な考えがグルグルと駆け巡り、悟美は何を言って良いか、分からなくなっている。 そんなところに、また純が調理しかけの包丁を置いて、ある事情を告げた。 「あ、悟美にも話しておこうって思ってたけど。今週の日曜日ね。蜂屋さんから、旅行に誘われたの。それで一日だけって事だから、色々考えたけど、お母さん行ってこようかと思う。船を借りて、島に行くんだって。そんな所、行った事なかったから。」 話をしながら、純は嬉しそうな顔を浮かべて、想像をしている。 聞いていた悟美は、ソファに脱落していた体を、まるで勢いよく起き上がらせるようにして聞き返した。 「えっ⁈ どういう事⁈ 旅行⁈ 二人で⁈」 「そ。凄く綺麗な海なんだって〜。旅行自体、久しぶりだから、ちょっと行ってみようと思うの。」 一人だけ勝手に楽しみな気分になっている母の姿が、悟美には許せない。 「それって・・・。」 「大丈夫よ。心配しなくても。悟美のお土産も買ってくるから。私なら、大丈夫だから。」 キッチンの方から、微笑みを見せながら純が言った。 「いや・・そういう事じゃなくて。」 悟美は聞こえないぐらいの声で、ポツリと呟く。 純が包丁を使って料理をしながら、話を続けた。 「私もさ、今年でもう38になったけど。すぐに、40になるよ。そう考えると、人生なんてあっという間だなぁって思う。時々、人に言われてきたんだけど。お父さんが亡くなって、もう5年が過ぎた。悟美もいずれは結婚して自分の家庭をもつ。そうなった時に、一人ぼっちじゃなくて、何か第二の人生を作っていても良いんだよ、って。」 話を聞きながら、悟美はショックの色を隠せず、困惑しはじめる。 「そ、そんな・・・。お母さんを一人ぼっちになんて、しないよ。」 純は調理を続けながら、余裕のある態度で返した。 「気にしないで。悟美とずっと一緒にいたいってわがまま言ってるわけじゃないし。あなたに結婚するな、って言ってるわけじゃないし。でもね。あなたも自分の家庭を持てば、忙しくなるし、私なんかを今みたいに構ってるヒマなくなるんだよ。それが現実なのよ。」 悟美は身動き出来ずに、微かに手が震えている。
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