飛鼠と歌姫と私の世界

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 蝙蝠は、血を吸うと恐れられているが、飲まない蝙蝠の方が多い。  さらに、吸血蝙蝠は病原菌を持つ点では危険だが、仲間に血を分ける行動をする仲間思いの動物らしい。  夜行性で昼間は木や屋根、洞窟に身を隠す。  超音波でコミュニケーションを取り合うため、基本的に鳴き声は聞こえない。 『ねえ、悪夢バットとしてのクイズです。蝙蝠の鳴き声はなんでしょう?』 『騙されないですよ。蝙蝠は超音波なので』  あのときのメッセージには続きがあった。 『それがね、鳴き声があるの。キィキィとかチチチって』  師匠が言うには、蝙蝠は鳴く場合があるそうだ。  それもセミのような求愛行動ではない。  蝙蝠は、 『助けてほしいってときに、SOSとして鳴くんだって』  普段は超音波で鳴くのに対して、SOSだけは人が聞き取れる声で鳴くのだ。  私は耳を澄ませるべきだった、師匠の声を集めるべきだった。  師匠が思いを曲にしなかったのは、ボカロPとしてのプライドがなくなったからではなく、あまりにも辛かったから。  師匠にとって、SNSもボカロも歌ってみたも大事な居場所だったのだ。
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