飛鼠と歌姫と私の世界

14/20
前へ
/20ページ
次へ
 私は師匠の声をちゃんと聴きたいって思った。  どんな言葉を投稿していたか、どんな曲を作っていたか、私の曲をどう歌っていたのか。 『ももぱちちゃんのこの曲、最近のお気に入り。ほら、楽しそうでしょ? ボカロが好きってすごく伝わる。この子、ほとんど調声してないんだけど、でもしっかり時間かけて作っている。ありのままが好きなんだって。聞いてて元気出るよね? ね?』  限界オタクのようなテンション。  改めてこの投稿を見ると、『悪夢バット』さんが『悪夢バット』さんだって思える。 『切ない恋の話です』 『運命の恋を見つけた少女の話です』  小さな痛みも幸せも『悪夢バット』さんは曲にしてきたんだ。 「これ」  あの人の動画投稿に、私のボカロ曲の歌ってみたがまとめられていることに気づいた。  いつまとめていたのだろう?  私は気づかなかった。 『私の弟子です』 『妹みたいなもの。大事な人、才能がある人』 『私はももぱちちゃんのファンガチ勢第一号』  私は、スッと冷たい涙を流していた。  でもすぐに目が熱くなって。  私と師匠は、SNSで繋がっているのだ。    メッセージを開く。  そして、迷わず。 『私は悪夢バットさんともっと仲良くなりたいです』
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加