飛鼠と歌姫と私の世界

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 私が師匠のボカロ曲を歌うと師匠はいつも飛んできてくれる。  私のファンよりも、師匠のファンよりも早く。  声綺麗だねって、切なくて消えそうで、どこか力強いねって。  ここは私の居場所。  消えるわけないでしょ? 『ももぱちちゃんはどうしてももぱちなの?』  SNSのダイレクトメッセージにて。  師匠とそんなやり取りをしたことがあった。 『桃ってかわいくて、ぱちって炭酸のしゅわしゅわみたいで。いいなって』 『ももぱちさん、思考回路までかわいいかよ』 『悪夢バットさんはどうして?』 『悪夢はノリかな。バットはね』  要約すると師匠は自分のことを蝙蝠に例えたらしい。  蝙蝠は鼠が飛んでいるように見えることから飛鼠(ひそ)ともいう。  あの地味な生き物と、きらきらした歌姫が上手く繋がらない。  私の方が蝙蝠みたいだ。
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