飛鼠と歌姫と私の世界

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 師匠は、SNSに写真や文字だけの投稿が増えていった。  明確に『歌う』頻度を減らした師匠を師匠だと思いたくなかった。  私は師匠と反対に曲をたくさん作ることが増えた。  日常に転がるだけの人生がひどく冷たいものに感じて。  希死念慮という言葉を見つけて、でも狭い教室には負けたくなくて。  リスカに憧れる人間を馬鹿にしながら歌を作った。  私は人を見下すための言葉を歌詞に込めて。  なのに、ファンは増える。  励まされました、なんてただその人の希望に私の言葉が曲げられただけ。 「私の歌って超音波なんだ」  どんどん一人になっていく。 『ももぱちちゃん、私悪夢見ちゃった。なんかずっと刃物を持った男に追われてた。絶対見ちゃ駄目な悪夢だよね』  師匠からメッセージが送られると胸がうるさくなるのだ。  どうせ。  外の世界の暇をここで埋めてるだけだ。
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