二日一殺

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二日一殺

…………………………………………………… 「善人はなかなかいない」     ~フラナリー・オコナー~ 恨み、妬み、嫉み、怒り、恐怖、義務、欲、女、男、快楽、猟奇、 今日も何かの理由で、いや理由がなくても 誰かが誰かを殺している。 …………………………………………………… 姉は弟のことが大嫌いだった。 『汚いし、下品だし、オムツもとれないし』 そう思いながらも姉は少し歳の離れた弟の面倒を毎日みていた。 『死んじゃえばいい。そしたらわたしは自由になれる』 食べ物を柔らかくして食べさせたり、オムツを取り換えたり 折り紙を折って教えたり、本を読んであげたり、弟のために 自分を犠牲にして毎日、目を離さずに面倒みていた。 冬のある寒い日。 姉は目を覚ました。弟の部屋に向かうと 弟が冷たくなっていた。 部屋は冷凍庫のように冷たくなっていた。 暖房が点いていなくて 弟は凍死していた。 …………………………………………………… 隣人A「お隣りのご姉弟も大変だったわね」 隣人B「びっくりしたわ、朝から救急車ですもの」 隣人A「弟さん凍死ですってね」 隣人B「ええ」 隣人A「でも、105歳って、もう大往生じゃない」 隣人B「そうね、お姉様だって112歳よ」 隣人A「お姉様は『わたしが殺した!』って言ってるみたいよ」 隣人B「そうね、でも弟さんの介護とリハビリが大変だったし、暖房の点け忘れみたいじゃない?」 隣人A「ええ、最近はお姉様の痴呆も少し進んでいたみたいだし」 隣人B「それにしても仲の良いご姉弟でしたわね」 隣人A「ええ、ホントに」 …………………………………………………… 二日一殺、終。
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