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「じゃあ逆に、シズカはどんな家がいいんだ?」
聞かれたシズカは、顎に手を当てて、うーんと考え込むそぶりを見せた。
「そうねえ……まず、ちゃんと酸素があるところがいいわね」
「いやいや、待て待て。今の時代、酸素のない星なんてないから」
「あら、そうなの?」
「そうだよ! パンフレット、読んでないのか?」
「読んでるんだけど……酸素はちゃんとあるのね。じゃあ、とりあえずまともに暮らせる天気のところかしら」
「いや、だから、もう大抵の星じゃあ、天気は人間が暮らしやすいようになってるんだって。」
「でも、私の友だちは、海王星の方だったかしら、すごく寒かったって」
「そりゃ、あそこらへんは、指定研究地域だろう……」
「確かにそうだったわね」
呑気に相槌を打つ妻を見て、アユムはため息をつきたくなった。いや、もちろんシズカだって真面目なのだが——この調子だと、絞り込むどころではない。
彼の妻は、理想があまりにも低すぎるのだ。
その謙虚な性格は、もちろん素晴らしいことだ。妻としては素晴らしい特質だとアユムもわかっているし、逆に理想が高すぎる彼は、彼女から学ぶことも多い。
でも、決め事のときにはこうやって困ってしまう。世の中うまくいかないものだ。
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