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さて転院するにあたり、最大の敵が存在していた。
時は2020年11月20日コロナウイルスパニックの真っ最中である。
まだワクチンも未完成で人々がナーバスになっていた時期、当然だが大きな病院に通う大きな障害となっていた。
病院入り口は通常患者用と増設されたコロナ患者用に別れており、通常患者入り口に入ろうとすると、RUSTというオープンワールドゲームに出てくるファズマット(放射能防護衣)を着用した人から体温チェックや簡単な問診を受けた。
何だか世紀末ゲームに入り込んだ気分である。
ここに来るまで市営バスで来たのだが、調子が悪そうな私なのにうっかり咳払いすると、他の乗客から汚物を見る目で見られてしまった。
まさに世紀末である。
モヒカン男が火炎放射機で汚物は消毒だぁ!と暴れても不思議に思わない自信があった。
ドナドナからクリスタルキングの愛をとりもどせを脳内で奏でながら、コロナチェックを突破した私は市立病院のメニエール病を診てもらえる耳鼻科へと到着した。
待合所に到着すると、とんでもない違和感な光景がそこにあった。
違和感と言うと失礼で申し訳ないのだが、大量の妊婦が椅子に座り診察を待っていた。
来る科を間違えたと思ったのだが、婦人科とメニエール病を診る耳鼻科の受け付けと待合室が共通だったのである。
これは気まずい。
受け付けカードの色で判別すると、婦人科9割、耳鼻科1割くらいだろうか。
私は目眩と闘う戦士と考えて頭と目頭を押さえて黙っている。
逆効果だった。
妊婦さんは性根が優しくなりがちで、私が調子悪そうにしていると心配で声を掛けてくれるのだ。
私がメニエール病の事を伝えてコロナ検問で目眩が悪化した事を伝えてみると、妊婦さんのコロナ渦トークが止まらなくなってしまった。
自慢じゃないが私は脳内台詞こそ豊富だが、いざ対人すると蜘蛛ですが何か?の主人公である白ちゃんレベルのコミュ障である。
ひたすら愛想笑いでマシンガントークと戦っていると、診察で呼ばれた私は逃げる要に診察室へと逃げた。
その時に採血と点滴を受けた。
何と!注射が一発で決まる。
ジャブ中の様な左腕が痛くなかった。
うん、あれだ。
とりあえず耳鼻科の看護師には修行しなおせと進言しておく事にする。
聴力検査専用の部屋は特殊空間仕様でサイバーパンクの世界みたいで楽しかった。
その時に判別した聴力は右が100%とするなら左耳50%まで低下している事が判明した。
そして真っ直ぐ歩けない私は、移動式ベッドに寝かされたままガラガラと音を立てて運ばれて行く。
そんな私を見た先程話をした妊婦と目が合って気の毒そうな顔をされて非常に気まずい思いをしたのであった。
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