悪魔憑依 悪魔に支配されし者

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悪魔憑依 悪魔に支配されし者

それ以降、マディラは学校を休んで休養しているという訳らしい。だが、その一方で彼女の奇行は変わらず身体が重たくても引き摺りながら、夜中の夜歩きは続いている状況のようだ。 「ママ……」マディラはぐったりとした目つきでベネシアを見つめる。まだ高熱が治らないのだろう。しかし、高熱が発覚して約一ヶ月あまりかかっているあたり、明らかに異常だ。その事を考え、「ねえ、何か大きな病気にでも感染したの?明らかにおかしくない?高熱が発覚して数ヶ月も経ってるのにまだ治っていないなんて」そう疑問をぶつけた。「ううん、確かにおかしいって思って念の為に発症して一週間後くらいだったと思う……病院に受診しに行って見たんだけど、結果は風邪でも何でも無くて特に目立った病気は言われなかったの、感染症でもないと……原因不明って訳なのよね」ベネシアはガネットに伝えた。当たり前ながら、その事にしっくり来ない様子のガネット。原因不明な事程恐ろしい事はない。それから、再度この数ヶ月間の間にあった怪奇現象についてガネットは詳細を尋ねる、「それで……一応確認の為にこれまでに起きた現象について詳細を教えてくれない?知り合いに話だけでも通してみたいから」彼女は相当この一家との交流が深いのが心から寄り添っているあたり見て取れる。ある意味ただの隣人の関係を通り越して友人や親友のように接し方に暖かみを感じる優しさを持っている、ベネシアは高熱に悶えるマディラを横眼にしてとにかく怪奇現象でこれまで何があったのか話す。改めて現状を知り、ガネットはマディラにゆっくり歩み寄り…とマディラの様子に異変が訪れる。マディラは起き上がったかと思えば、ガクッと前倒しになって呼吸が荒ぶる。更には肩に違和感を覚えたのか左右に首を動かす。「マ、マディラ、大丈夫?」ベネシアはマディラにもっと傍近くに歩み寄った。そして遂にこれまでの現象を凌駕してしまう瞬間をベネシア達は目撃する事になった、「マディラちゃん……?」二人は様子がおかしいマディラを気にかけ、声をかける。それは突然起きた、「ハハハ、こいつは眠った、俺はマディラではない、グハハハ!」マディラから発せられた声は……明らかに彼女の声では無かった。十三歳の少女とは程遠い声だったのだ。しかも、まるで別人格のような発言が溢れた事からも彼女ではなく今話している声は全くの別人だろう。「マディラじゃないなら、貴方は一体誰なの……?娘の身体から出てって」ベネシアは戸惑いから、一つの可能性は脳裏に過り彼女であって彼女ではない者に強く要求した。だが、そんな簡単に要求に応じる訳もなく彼女のような何かはまた嘲笑うかのような不気味な微笑を響かせる。そんな中あまりに驚愕な事が目の前で起きている状況下である為にガネットは言葉が出ないようだ。「こいつも地獄の仲間に招待だ、寂しさを紛らわせる為に」とベネシアの問いには一切答えようとしないどこか、話が噛み合ってない。更には彼女は笑い声をあげると、突然とポルターガイスト現象が起きた。そうして、そんな何とも不可思議な対話は暫く続き、邪悪な声は彼女の呼吸が荒くなった事で彼女の声は元の声に戻っていて、その反動で彼女は意識を失い、発作みたいに身体全身が痙攣を起こし…それは何とか数十秒位で収まり、そこからはぐっすり眠るように気絶し、一旦の恐怖は静まった。明らかに彼女ではなくなっていた、先程の瞬間二人は言葉にできない恐怖を目の当たりにし、共に暫くは放心状態だった。「何なの……、さっきの…明らかに私が知ってるマディラじゃなかった」「ええ……ほんとに別人みたいだったわ…、私もマディラちゃんがあんな声を出すとは到底思えない…、もしかして悪魔とか、悪霊に憑依されてるんじゃないの……?十三歳の少女とは程遠い声だったし、声変わりだとしても子供からあんな声が出るなんて有り得ないわよ、早く相談した方が良いわ」ガネットはまた催促を促すが、実はベネシアはベネシアなりになかなか相談に切り出せない理由を抱えていた、それは、「話しても、信じてもらえないんじゃないか」という事だった。それにこういった悪魔や霊によって引き起こされた事件事例は現象の原因が悪魔や霊だと断言できる証拠が必要になる。証拠が無ければ幾ら専門家といえど信用はしてくれないだろう、その迷いがあって行動になかなか移せないのだと、ベネシアはガネットに説明した。「……それもそうね、確かに現象を本当だって証明出来る証拠が必要になるね、これまでニュースであった事例どれも最初は誰も信じてくれなかったって耳にした事がある、実際にそんな経験した事ないから私は……良く分からないけど、でも貴女と、貴女の大切な家族が辛い思いを沢山してるのは分かる、だからこそ友人として何か力になりたい」ガネットは本当に何よりのベネシアにとっての家族以外での心の支えになっているのが、十分に伝わってくる、思いやりの深い心の持ち主に彼女は支えられている。そうして、気付けば夕方になっており、娘達や夫が帰ってくる時間になってきた為ガネットは御暇するからと玄関に向かい、お互い一言二言話し、そのついでにベネシアは彼女からお守りの十字架のネックレスを貰い、魔除けとして首に下げておいてと言われ、ガネットは帰っていった。その数分後に娘達は帰ってきて、母親に挨拶する訳だが、何時もより何だか元気がないように思えた為に気にかけてベネシアは二人にどうしたのかと聞いてみると、マディラの様子がガラリと変わった頃ぐらいからこの家や長期休みをしているマディラに対して虐めがあっているとの事。その事を明かされ、ベネシアはとりあえずマディラの状態について、まだ熱は下がってないと軽く伝えた。「大丈夫だよ」と聞き覚えのある声が後ろで聞こえた……彼女の声だった。「え、マディラ……?、貴女部屋で寝てたはずよね、もう大丈夫なの?」とベネシアは尋ねた。すると、彼女の口から衝撃の言葉が出たのだ、「………分からない、急に此処に居た、だからお姉ちゃん達の話も聞いてた」と不意にゾッとする発言が飛び出た、つまりあの不気味な対話があって、その後気絶してベネシア達が玄関で話していた頃……瞬間移動のように気付いたら廊下に居たというのだ。「マディラ…、ほんと?別に貴女を疑ってる訳じゃないんだけど…」とベネシアはマディラに尋ねた。マディラは…「嘘じゃないよ……ほんとに知らないうちに部屋の外にいたの、お願い、信じて」度重なる怪奇現象に緊迫した状況が常にまとわりついている為に彼女は感情が不安定になって涙目で母親達を見つめる。「マディラ……、そうよね、貴女も変な現象に苦しんでいるものね、ごめんね」ベネシアはマディラをそっと抱き寄せて、ぎゅっと暖かなハグをした。マディラは特に幾つもの不可解な現象に見舞われ、苛まれているのもあって、この数ヶ月間で精神的にも疲弊しかけ、その影響が響いて実はマディラは長期間もの間原因不明……ではなく霊障や睡眠不足らが考えられるが、本当の理由が良く判明していない以上は不安が拭えない。「………………うう、う……」彼女は気分が悪くなったようで、吐き気を催している。それを示すように嗚咽を溢す。母親はそっと撫で下ろしながら、マディラの背中を摩る。この様子をリナベラとフィリーナは不安げに見つめる。マディラにばかり何かと現象が巻き起こっている。ポルターガイストは現象だけではなく、普段の生活にも、致命的なダメージを及ぼす。その影響とは……、「ダメ、テレビも砂嵐ばかりで故障してる」リナベラはテレビの裏側の線を触りながら、母親にそう報告をした。その他にも、電気機器や電化製品なども立て続けに故障してる状況で、買い換えようにも、費用が足りなかったり、ましてやそんなに年数が経たずして突然故障したのもあり、身近に影響が更に入り込んでいる。この数ヶ月間でようやく、この家に対する違和感をグッと肌で体感し、初期の頃はまだこの家にいる「何か」は本性を発揮していなかった為に、そこまで気にもしない程の怪奇現象が、これは推測にはなってしまうだろうが、嫌気が差しこの一家に【早く出て行け】という警告を出しているのかも知れない。そして、何より邪魔されたくない……、そう思ってそうだ。「そう言えば、あれから専門家の人とは会える予定立てれそう?、相談するなら近いうちに行って事情を話して原因をはっきりさせた方がいいんじゃないか?」「そうね、だけど話したからって言って心霊現象だと裏付けることが証明出来ないと殆どの場合が引き受けられないんでしょ?、だから……勇気が出なくて」夫婦二人はそう話し合う。でも、だからってこのまま放置しても現象は変わる訳ではない、しかし段々もう手に負えない程ポルターガイスト現象や怪奇現象が現象が表面に出始めた頃よりもエスカレートしていくのは既に目に見えている。一応、あまり意味は無さないが、万が一を考えて先ずは警察に相談した。警察は隈なく捜査し、侵入者が入った形跡がないかの確認をする、その間ベネシア達は外で待機してそれから、数分後…警察は一通りの捜査を終え…野外に待機していたベネシア達に報告しに行った。「たった今、一通りの調査を終えましたが……これは我々警察には手に負えません、人が荒らした形跡もありませんし、不可解な物音や物が一人でに動くのもはっきり見えました、ですのでこういうのに詳しい専門家の方に相談されて下さい」警察官の人はそう話し、専門家の人物に会うのを推奨した。やっぱりか……そういうような顔で、「………分かりました、相談してみます、突然来て貰って調査して頂いただけでも、感謝します…ありがとうございました」「はい、それと状況的にこれ以上、野放しにしたらご家族皆危ないですよ」と警察官の人にも警告をされ、もう躊躇いさえ許されそうにない事態に追い詰められた。一家全員…特にマディラは精神的に弱って、これまでにないくらいにマディラは見えない存在に怯え、深夜になると魘され夜歩き奇行、誰かと話すような仕草を頻発している……彼女は段々と、徐々に何時もの、姉達や両親が知る彼女ではなくなった。今夜も、また彼女は彼女しか見えない誰かと会話を交わしている、不気味なヒソヒソ話……かと思えば、「何でそんな酷いこと言うの…!!? 、…………煩い、お前は黙ってろ、さもないと……………すぞ」変貌し、怒鳴るような声で一人事を話す。彼女の声が夜中に響く度に姉達は目覚め、彼女に寝るように促すが、突然彼女の意識はボッーとしてあまり他の人の声が聞こえておらず反応するにしても随分遅れて返事する事が多々ある。「寝るよ、マディラ…ねえ誰と話してるの?そこには誰もいないよ?」リナベラはマディラにそう話す。しかし、彼女は…ぼっーと壁の一点を見つめたまま、ピクリとも動かない。ただ,ひたすらに一点を見つめていた。暫くすると彼女は何事もなかったようにベットに向かうが……何やら視線を感じ、辺りを見る。『誰かに見られている』そう唐突に言い出した彼女、それは毎晩感じると話す一方で、最近…より自分の近くに視線を感じるようになったとも、彼女は姉二人に伝えた。「気配?、どこから気配がするの?」リナベラはマディラにそっと話す。マディラは視線がする方に指を指し示す。指した方向は前話していた壁側ではなく、部屋の片側にあるカーテンだった。カーテンを見つめていると……、マディラは途端に再び震え出し、そこにいる……そうぼやいた。これが、嘘なら良かったが、接近した途端に瞬く間にポルターガイストが起き…笑い声も彼女達を襲った。すると、マディラは突然平然となり…誰かに導かれるがままに歩み始めた。それは……、とある一室。「マディラ……??、こんな夜中に部屋を歩き回ったら危ないよ、ねえ聞こえてる?」リナベラは無我夢中でとある一室に向かおうとするマディラを手を掴んで止めようとするが、彼女はそれでも向かうことをやめない。彼女を説得している間にも、ポルターガイスト現象は激しくなり、電球の点滅、更には照明は消え…耳を澄ませばリビングにあるテレビの砂嵐の音が微かに聞こえる。現象の嵐は止まなかった。物音が恐怖を煽り続ける、ドアをかなり強くドンッドンッドン!と叩く音、物音だけに留まらず、こんな真夜中……部屋の外から響くのは無数の足音。タッタッタと少し小走りの場合と、ゆっくり近付いている足音がある。「っ……、もう止んでよ」フィリーナは止まない怪奇現象に嘆きの声を上げた。怪奇現象に参ってるのはこの一家皆んなが同じだ、でもそんな思いを他所にして現象は頻発を極めた。リナベラはぎゅっとマディラの手を掴み続け、何としても阻止しようとするも遂には振り払われてしまう…しかし、その瞬間、やけに妙な違和感をまた感じたのだ。「………あの子……あんなに力強かった……?」と今までの彼女ではあり得ないくらいの力を感じたと言う……、それに疑問を抱き…でも今は彼女が向かう先を追わないと…そう決心し…行動に移す。が、またもや怪奇現象が行手を阻む。その頃、一人夜歩きして部屋を彷徨き、何かに呼ばれるがままに…部屋に向かって辿り着いた先は椅子と、花瓶…ビアノ、オルゴールのみが置かれた何とも質素でシンプルな作りの部屋だった。この部屋は姉妹皆んなで姉妹だけでの思い出のひと時を過ごしていた部屋。しかし、途中から別の余暇専用に良く行くようになった為にこの部屋にはいつの日か来なくなっていて、その為置いてある殆どの物に埃がかぶっていた状況だった。だが、今の彼女はまるで放心状態で、無意識で動いているから何も感じなくなっている…、想い出など惹かれない…。「呼べれてる場所……此所、でも……誰も……」すると、マディラが立っている真後ろから何やら怪しく禍々しい存在が横目に姿を露わにする。それは……恐ろしい形相でまた彼女を威嚇し、マディラは悲鳴を上げ…恐ろしい形相をした何かに手を掴まれ、「きゃああああああああああああああ!!!!!、助けて…!」マディラは悲鳴と、大声で助けを呼んだ。マディラはみるみる手を掴まれたまま、身体も引っ張られてしまう。抵抗をすると、噛まれ…引っ掻かれ…目に見えぬ者からの攻撃を喰らう。しかも……ガチャッ……ガチャン…、「きゃあああ!!!」マディラは無情に叫んだ。明らかに施錠された音がその場に鳴り響き、完全に彼女はこの一室に閉じ込められた。ドアが閉まる音を聞きつけ、リナベラは数分遅れでフィリーナと共にマディラが閉じ込められている場所へ到着したが、此所でドアが何故か閉まっている事に気付き、焦る二人。その間にも怪奇現象が横行してまさに恐怖の極限状況…恐怖に怯え、妹を助けなきゃと言う気持ちと、その気持ちに身体が追い付かず…結局母親に助けを求める事にし、急いで彼女を救うべく二人は駆け足で母親が眠っている寝室へ向かい、起こして落ち着いて状況を伝えた。そうして、ベネシアは彼女が閉じ込められている部屋の鍵を持って、娘二人に場所を案内され、解錠をする。鍵を開け、中に入るとマディラが壁に凭れ掛かっていて、数カ所明らかにおかしい傷跡があった。しかも、出来て真新しい傷跡ばかり、しかし地獄のような恐怖は未だ彼女らを直撃した。とりあえず、マディラを軽く手当てする前に先ずは元の寝室連れて行こうとマディラに立ち上がれるか聞き、立てると答えた為…立ち上がり、娘達の寝室へ行こう、そう声を掛け合った瞬間。不気味な不協和音のようなメロディをピアノが一人でに奏でられ始め…、椅子もガタガタっと震え音を立てる。そうして、誰も触ってないのに忽然と扉が開いたクローゼット…不気味な現象がまたもや発生……、「さ、部屋に戻るよ」リナベラはマディラに手を差し伸べ、この部屋から出ようとすると、何故か彼女は見えない何かに足を取られクローゼットの中に引き摺り込まれていく、それに抗うように彼女は母親と姉二人に再び助けを求め、手を伸ばす。「マディラ!!!?、大丈夫……!?」リナベラはぎゅっと彼女の手を掴み、引っ張り出した。引っ張り出した後、掴まれた足首に目をやった。そこには出血した跡…鋭い爪が数本刻んであった。ポルターガイスト、傷跡……何もマディラが集中攻撃されている。目に見えぬ何かは彼女だけが狙いのようだ。「っ、うう……」マディラは恐怖の出来事の連続…恐怖と感じる感情が、何より先越して涙が零れ落ちた。「マディラ、怖かったわね、もう大丈夫だから」ベネシアはそっとマディラをもっと安心させる為に抱きしめる。証拠もないが、これは早急に相談に乗ってもらう他無さそうだ。そう心の中で決め、決断を早める事に。深夜の騒動は一旦これで一段落したものの、やはりすぐさま眠りについて忘れられる事ではない。特に娘達に多く実害が及んでいる、この家には……何かが棲み憑いてる。そう思わざるを得ない、とりあえず娘達の寝室へ向かい…あんな事があってはとベネシアは娘達がしっかり就寝に入るまで見守る。その後も、二人は何とか安眠につけたが、一方で問題はマディラの方で一応眠っているものの、ずっと悪夢を見ているかのように唸って、魘されていて終始苦しそうな声を出していた。近寄って彼女の額を見ると、汗が流れ出ていた。まるで高熱にまたなったのかと思う程に……呼吸も荒ぶり、相当悪夢に苦しんでいるのだろう。と、ふと何かを思い……咄嗟に母親は自室からカメラを探しに行った。それは何故か理解できるだろうか、それから数分後彼女は再びマディラ達の部屋に戻るや否や、マディラが負傷した傷跡……首元付近にある濃い痣、それらを念写した。そうして彼女はこう呟いた、「これで………、専門家の人達も……状況を理解してくれると良いけど」と。大した確信が付けるほどの物的証拠が手元に全くないが為に最悪手を貸してくれすらない可能性もあると言う不安が出てきてしまう。でも、今は……目の前で悪夢に悶えていくマディラの事が何よりも気にかかる。彼女の周囲だけにあまりにも多くの不可解な現象が相次ぎ、被害も出ている事から、マディラが何かしら関係している……それは気付いたがそれ以外はまるで何もかも不明である。その後、ようやくマディラも安眠に入り、これで一先ずは安心…と安堵の表情をしベネシアは自室へ戻ろうとその場を立ち去ろうとした、その時マディラはまた悪夢に魘され始め……でもベネシアが近寄ると、治るという不自然な事象…。再度安眠を確認し、退室…。そうして、何とか夜を越し……また次の日の朝…、フィリーナは目覚め、起きるともうマディラは起きていた。彼女は幼い頃から割と早起きする方ではあったが、今の彼女は……何処かおかしい、ずっと同じとこを見つめたまま、ただボッーと佇んでいた。これと言って気になるような物は置いてはいない。だから、不自然な行動に見える…リナベラも丁度きたので、フィリーナは今日もやっぱりマディラの様子が変…そう伝えた。リナベラもフィリーナ同様の声かけをマディラにするも、返事は返ってこない、朝だからきっと反応が遅いだけ、そう考えもしたけど、でも、これまでは普通におはようの挨拶もしてくれてた、でも突然それは嘘のように無くなって今ではすっかり無口になって、毎日何かに怯えて………。 そうして、とにかく朝食を食べる。マディラは食欲すらも減少しているようで、残して終わる事が常日頃な現状。何もかも至るまで彼女は明らかにおかしくなっていると、もう家族全員がそう感じ取り、専門家の人達に相談を早めると一家全員が満場一致、急遽ではあるが明後日には訪問に来てもらえるように予定を改めて立てるように事を進める。「それにしても、こんなに事態が大きくなるなんてな…昨夜もマディラが襲われたんだろ…?」「ええ……だからマディラに何かしらが影響を及ぼしてるのは間違いわ、それに…この子…悪夢を良く見ていたり、声が聞こえるって言ったりもしてる…それに」ベネシアは夫に昨日撮った写真をプリントした物を数枚見せた。それを丁寧に一枚一枚、手に取ってじっくり観察するグラデイル。「痣に…何かに引っ掻かれた痕、か……、これは確かに不自然だな、怪我したり虐められたとかそんなんじゃないんだよな?」とベネシアにそう確認の為にベネシアに尋ねる。勿論彼女は違うと答えた、しかし此所が所謂(幽霊屋敷)として娘達が通う学校の方でも噂が立って陰口を頻繁に言われるようになったと娘達から数日前に聞かされた。ベネシアはそう答える。傷跡の写真を再び見て、彼はこう呟いた。「動物に侵入された……いや、それはないか…、部屋に入ったなら娘達も気付くだろうし……やっぱり人じゃない何かの可能性が濃厚そうだ」「前に言ってた……悪魔の仕業…?」二人は見つめ合う。「ああ、その可能性が高いだろうな」と、そう告げた。彼としての考えは変わってない感じのようだ。人的要因に当てはまるような事が見当たらない、なので人間ではなく幽霊……若しくは最もタチの悪いとされる悪魔……何かの二択のどちらかの仕業に違いないが、いかんせん何度も前述している通り、それと証明出来る事がない。写真があるじゃないか、そう思いかもしれないが…今ある傷痕の写真が仮に虐め、若しくは家庭内虐待を疑われる事だってあり得るのだ。不安になっている彼女をそっと抱き寄せ、彼はこう言葉を投げかける。「そう簡単には信じてもらえないだろうけど、先ずは話してみない事には今の現状から何も進めなくなる、それにマディラを救う為にも」とまた妻に寄り添い、心強い言葉をかけた。そんな優しさ溢れる言葉に何時も彼女は支えられ、励まされている。「そうね、貴方の言う通り…話してみないとわからないものね、ありがとう」話を終え、朝食を片付けて其々仕事、学校に行く支度をする。娘達は朝だけ何時も送っているのだが、虐めや陰口などを言われるのが辛いとリナベラから突然告げられ…専門家の人達の訪問日まで…つまり数日だけで良いから朝と帰り両方の送迎をして欲しいと頼まれ、「分かったわ、じゃあ帰りも迎えに行くわね」とベネシアはそう言ってそっとリナベラ達を寄り付け、そっと優しく抱き寄せた。「……ありがとう、ママ」とマディラはそうポツリと言った。こうして、訪問日までは母親の送迎になり、これで多少の心の救いの手になる事を願おう。たたでさえ、毎晩怪奇現象に頭を抱えていて、家の外では『幽霊屋敷』などの噂が経って余計に精神が擦り減ってしまう…そんな状況を一家だけで背負い込んでいる…助けてくれる人が居るにしても、それでも心許ない程度にしかいない。他の周囲の人からは殆ど冷たい視線を浴びてばかり……、「じゃあ、行くわよ?もう、皆んな学校に行く準備は出来てる?」ベネシアはそう言って、娘皆に確認する。オッケー、そう言うように娘らは相槌を打って玄関を出て車に乗り込み、学校へ向かう。車を走らせる中、リナベラ達はまた学校で陰口を言われる……そんな事を考えながら車内から見える景色を見ていた。その一方で、マディラは何だか無気力気な感じで一番顔が暗く、姉妹で仲良く話したりする事もなかった。車で向かう事数分……彼女らが通う学校に着き、着いたと伝えると、二人はすんなり車から下車するも、マディラはぼっーとして、着いたのすら気付いていないのかキョトンと座ったまま。「マディラ?、学校に着いたよ」ベネシアはマディラに教え、マディラは反応がワンテンポ遅れて応答し、「………あ、ありがとう…ママ、行ってくる、また帰り………」彼女は車から降り、姉二人と一緒に学校の中へ入って行く。その様子を不安げに見守りながら、彼女らを見送る。やはり、明らかに…間違いなくマディラの様子がおかしい、家でもついさっきのように反応が遅れて返答するのをみている。それにマディラのみ、毎晩夜歩きや悪夢に魘されている、その為、娘達が話していた事の延長線上の補足になるが、マディラは学校で生徒の多くから、『お前は異常者だ』と罵られていると言う……、彼女はその度に泣きじゃくってる。周りの生徒は面白がっていじって、でもマディラには何時までも、優しい味方である姉二人がいる。一番今、心や精神、肉体的に追い詰められてるマディラにとって何より頼もしい身近な存在だ。今日も、また多数の生徒から罵声を受けるマディラ…、姉妹三人とも、同じクラスの為リナベラとフィリーナは『耳を貸さないで罵声なんか無視しちゃえば良い、マディラは何にも悪くないんだから、皆んな私達がどんなに苦しんでるかなんて知ろうともしてない』とマディラにそっとアドバイスをした。だから、それからはマディラは陰口や罵声が聞こえてきたら、耳を塞ぎ…遠ざく。しかし、塞いでも彼女を罵る笑い声は微かにながら聞こえてしまう、「…………私だって、好きで………こんな生活を送ってる訳じゃないのに…!!」マディラは少々半ギレになって声をあげる。ずっと言われるだけじゃ嫌、そう強く思ったのだろう。あまりイライラしたり、比較的怒りを剥き出しにしない性格なマディラだが、精神的…肉体的に疲弊している現状では…もう耐えられなくなって心も、もう限界を迎え始めてしまいそうだ。「マディラ………」リナベラはポロポロと涙を流すマディラを守るようにそっと包み込む。本当はマディラだけでなく、他二人…リナベラとフィリーナも辛い筈だろうに家族として……何より自分達姉という存在にとってたった一人の妹が目の前で傷つけられるのは嫌、その一心で大切な妹を守りたい…そんな思いが滲み出る行動だった。マディラは後ろに隠れ、啜り泣いていた、陰口の声から逃れる為二人はマディラを連れ彼女が気持ちを落ち着けられる場所へ移動し、「此所なら誰も悪口を言う生徒はいないから、気持ちが落ち着くまで此所にいよう」フィリーナはそっとマディラの頭を撫でた。だが、マディラの心には嘲笑った声が延々と響く…、トラウマになって、絡み付き…ずっと児玉する。その度にマディラの心は弱くなってる…、「うう……ううっ」と彼女は泣きつき、また落ち込む…精神的に疲弊し続ければ、見えぬ存在である何かの思い通りになってしまう。それだけは避けたい事態な訳なのだけど、彼女の精神と心は誰かに助けを無意識のうちに求めている程にまさに狙われやすい状況下に今マディラはいる、それから授業中も彼女は物を投げられたり…更には悪質な嫌がらせも執拗に受け、只々彼女の心だけがボロボロになって行くだけ…。こんな事が横行している為にマディラはずっと傷付き…、性格さえも歪みつつあった、そんな彼女を姉二人が懸命に支えてくれるそのお陰で何とか心が壊れずに済んでる、何とも残酷な現状ばかりを突きつけられて。休み時間が終わって教室に戻ると、周囲の目が再びマディラに向き、嘲笑い…軽蔑の視線を彼女は浴び続け、まさに地獄の時間だ。罵声される事への恐怖で手が震え、気付けば涙がポロポロ、流れていた。精神面が強く痛ぶられて耐えられず、ずっと授業中彼女は啜り泣いてる。あんな事が私達一家を襲わなければ…こんな辛い気持ち抱かないで済んだのに、内心ずっとそう思いを抱えていて、じっと堪えるマディラ。実際そうだ、彼女らが住む家が怪奇現象に見舞われ始めた途端に、この噂が近所や学校で拡がった… 今ではすっかり『幽霊屋敷』という通称が周りの環境で拡がり流れてしまった、毎月届けられる新聞にでさえ、それは影響している。そんな現現状に生きる一家…勿論全員元の生活に早く戻りたい…そう強く日々思い感じながら過ごしているが、最もの被害者はやはりマディラ…彼女だろう。現状彼女が唯一悪魔に憑依されている可能性をかけられている上に、彼女にだけやたら頻発的に現象が降りかかっている…更には悪夢、奇妙な奇行をやっている…あまりにも不可解な点が多いのも、疑わしいとしている事の一つだ。それから数時間後が経過して、午後五時…学校が終わって下校する時間になり…彼女らは他の生徒から変に揶揄われる前にそそくさと、迎えに来た母親の車に乗って家に帰宅する。家に帰ればマディラも少しは気持ちが晴れ、落ち着くだろう。家から帰り、マディラ達は制服を着替え…私服で課題を皆んなでやる訳なのだが、マディラはすっかり疲弊し…ぼっーとしていたり、泣きそうになったりと情緒不安定に苛まれ、するとマディラがポツリと明かした、明かした事とは…、「ずっと私のすぐ側から、声が聞こえてた……、脅された………」と。この一言に姉二人は凍りつく。ずっと…という事は学校にいる時も聞こえてたのかと質問してみたら、彼女は、「うん、ずっと…聞こえてた、侮辱を働く奴は殺せ…邪魔な存在全部消せってずっと、脅されてた」そうマディラは明かした。しかも、脅された言葉の内容まですんなり教えてくれた、だが……「…………やめて……、いやっ!!、分かったから…、出てこようとしないで…!!」と頭を抑え、一人事のような感じで、誰かと会話したようだ。もう、その正体など粗方予測はついてるとは思うが…、それにすかさず、寄り添うリナベラとフィリーナ。二人は妹の彼女の事を何時も第一に考えて、面倒をよく見る姉だ…だから、現状の中、虐めにまで発展していてその最大の被害者で当事者のマディラを大切に思い、マディラにはこれ以上傷付いて欲しくない、それが何よりの今二人が一番抱えている思いである。少し落ち着いた様子になった為、リナベラから、マディラについさっき何と言われたのかをゆっくりで良いから教えてと言ってはみたものの、それは出来ないらしい。「………たら、………される」モゾモゾと小言をぼやいた。耳を貸し、「?、何て今言ったの………?」マディラに質問したら、また呟くように、「言ったら…………殺すって」と打ち明けた。その事を知らされると、姉達はゾッとし青ざめた。背後に憑いているであろう者から、ずっと定期的に脅迫されていると言うのだから。それなら中々言葉で言い出せないのにも納得がいく、彼女は完全に怯え切ったようでその事から察するに彼女の言っている事は嘘ではないことは確かだろう。「そんな事を言われたの…?、なら、怖かったね、ごめんね…分かった、無理に話さなくて良いよ」フィリーナはマディラをそっと包み込むようにして抱き寄せた。彼女にとって姉らから受けるハグも親から受ける温もりと同等に感じられて、安心感に満たされる。優しく、大切にしてくれるフィリーナとリナベラは良い意味で母譲りな娘らしい。と、ふと気になり、フィリーナはマディラにこう頼んだ、「ねえ、前に痣が出来てたでしょ?それ、また見せてくれない?あれからの経過を知りたいから、少しだけで良い」と。マディラは少々の躊躇いを見せるも協力して、服を少しだけ捲り、首元も二人が見やすいように見せた。「………やっぱり酷くなってる、痣の範囲がまた前より拡がってる、これ…痛くない?」リナベラはそっと言った。その問いに、マディラは正直に痛いと、痛みがある事を訴えた。それと、もう一つ気になる事、それは目の周りや、瞼の下にある酷く濃い隈…これは睡眠不足でこうなっているのが、原因がわかってるとは言っても心配な事には変わりない。とりあえず、痣の程度はこれで確認完了で、まだ残ってる宿題の続きに戻る。数分後、ようやく課題を終えた、その後は夕食の時間になった為皆んなで食事を取る。相変わらずマディラはぼっーとしており、呼びかけないとずっと生気が抜けた感じになり、食欲も変化せず、減少したままの様子。「マディラ、調子…中々戻ってないみたいだな」グラディルは俯いたマディラを心配するように優しいトーンでそう話した。「ええ、全く調子が戻る兆候は見られないわね、学校でも今は虐めの被害者な訳だし、精神面で相当ストレスが溜まって不調の連鎖が続いてる感じ何だと思うわ」とそう見立てを出した。彼女が相当なストレスを感じているのは間違いない、それを表すように…実はこっそり裏でマディラは自傷行為をし始めてるのを、告げていなかったが姉達は数回発見している。
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