悪魔憑依 悪魔に支配されし者

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悪魔憑依 悪魔に支配されし者

だから、何かしら強いストレスを彼女が抱えているのは紛れもない事実である。「………皆んな、私のこと……怖がって虐めてくるの……もう、こんなの耐えられない」マディラをポロポロと号泣しながらそう思いを話した。この様子を見る限り、大きく、強いストレスに彼女が晒されているのも否定のしようのない。以前よりも今は感情的に、やたら涙脆くもなっていて、心が随分弱りつつある状況にどんどん追い込まれている。「マディラ、辛いよね、でもあともう少しで専門家の人が来てくれて色々話を聞きに来てくれるよ」リナベラはマディラを元気付ける。「う、うう……分かってても怖いの、ずっと誰かに見られてる感じがするし…もう怖くて仕方がないよ……」彼女は余計に涙腺崩壊し、号泣…、それ程精神面が危機的状況にある。「マディラ………」両親、姉達は共に心配そうな面持ちでマディラに視線を向ける。その後は夕食を食べたら、多少は精神面の乱れは回復したように見えはするものの、そう見えるだけで寧ろもっと悪化している事に気付けなかった。「大丈夫、マディラ……怖いかもしれないけど、貴女には私達家族がいるから」そうベネシアは部屋に一度戻る娘達の背中を見ながら、言葉をかけた。何時もなら夕食後割とすぐに順番で入浴に入るが、今日はマディラの精神状態が優れない為に、気持ちを少しでも落ち着かせてあげたい…姉二人はそう考え、マディラが元気になる事を優先し、傍にいてあげたりと、これまでよりも更に優しく接する事を心掛けて妹に寄り添う。「ありがとう、お姉ちゃん……」マディラはまだ少し啜り泣いている。まだ恐怖の感情は消えていないようで、不安が募り続ける。そこで、そんなマディラにフィリーナはこんな提案をした、と言ってもその提案というのは非常にシンプルな事で、「マディラが笑顔に戻るまで姉妹三人皆んなで入浴をしよ」という事だった。何時もなら、三人それぞれ入っていた。でも、今はすっかり変わってしまったマディラを思い…この提案に至った。「あ、ありがとう…………」マディラは涙を拭いながら、そっと二人の方へ抱きついてきた。「大丈夫だよ、大丈夫」と何度も安心させる声掛けをして、暫くゆったりと心を落ち着かせて…そしてようやく入浴に入る。何時もなら脱衣所から既に視線や笑い声が近寄る感じを察知している筈だが、今回はそういった事はなく、マディラ自身も安心して無事に入浴に入れた。しかし、逆にそれに対して違和感を覚えた、「あれ……不思議、何時も視線とか声とか煩いくらいに聞こえるのに」マディラは気持ち悪く感じて、辺りをキョロキョロとする。何時も起きる事だった…だからこそ、妙な居心地の悪さを反対に感じたのだろう。「そうだね、でも起きない方が良いよ、声とか聞こえちゃうとマディラも、私達だって怖い…だからこそ何も起きないのが一番平和的」リナベラはそっと彼女の頭をまた優しく撫でた。そうして、順番に洗い…浴槽に浸かる。でも、一方で裸体になる事でくっきりと見えてしまう、首元から拡がっている痣…更には過大なストレスの影響で自傷行為の癖がついてしまい、自らが作ってしまった傷。それが痛々しく、くっきり刻まれているのがどうしても目につく。「ねえ、この傷って自分で引っ掻いたりしたんだよね、痛くない?」フィリーナはそっとマディラの手を握って優しく尋ねた。今の精神状態のマディラに下手に怒ってしまうと、何するか分からないからだ。ただでさえ、マディラは過剰な程大きなストレスを抱え込んでいるのに、それに追い打ちをかけるように責め立ててしまえば、余計に精神に大きなダメージを負わせる事になりかねない。だから、今は優しく、慎重に接していくのを常に意識している二人。「痛い………でも、無性に掻きむしっちゃうの」と謎の痒みらしき感覚を覚え、無意識に自傷行為の衝動に駆られてしまうのだと話してくれたマディラ。「そっか、その時ってさ、心はどんな気持ちを抱いてるのか、話せる?マディラが今抱えている思いをもっと知っておきたいから」リナベラは姉妹三人だけの空間にいるからこそ、親がいる場では打ち明けられない事でもより親しい関係性にある姉妹だから…中々話せない事でも話せるんじゃないか、そう考えを踏んでちょっと聞いてみたのだ。「…………凄く苛々するの……、ずっと耳鳴りも鳴り続けるから……煩くてイライラしちゃうの、それが凄く嫌で…もう………生きてるのも辛くなってきたくらい………心が…沈むの」彼女は抑え込んでいた気持ちをこの時初めて家族に明かした。やはり、何時もすぐ傍にいる二人の方は彼女のとっては安心感がある模様。「……マディラ……やっぱり相当心が苦しかったんだね…大丈夫だよ、マディラに何かあったら私達が助ける…守るから」とマディラをそっと抱き寄せたリナベラ。でも、心の奥に抱え込んでいた事を吐き出せた事でマディラ自身も気持ちが楽になってほんの少しだけ笑顔が戻り、その微笑を久方振りに見た二人はホッと安堵して一安心。それと同時にマディラが抱えている気持ちを知れた事で一歩前進を実感したのだった。そうして、もう暫くお湯に浸かり…マディラは浴室用の玩具に手が伸び、遊び始めた。マディラは未だ精神面的には幼いようで玩具で遊ぶのはやめられ無い様子だ。そっと姿をすぐ傍で眺めてる二人、その表情はとても和かでほんわかしている空間。こうして数十分程の入浴を終えてお風呂から上がって体を拭き、寝巻きに着替える。すると、途端に不安になり蹲るマディラ。さっきまでは笑顔も見えていたのに突然それは変わった、彼女を気にかけフィリーナの方から話しかけて見る事に、「マディラ、どうしたの?急に怖くなったの?」と軽く質問する。と、彼女はそうじゃない…そう話した。では一体何が不安になってるの、と更に質問をする。「また、私……夜になると悪夢を見ちゃって眠れなくなるから、それが怖くて…夜の方が視線とか声とか煩くなるから…」とぼやいた。そう、この数ヶ月間彼女は現象は勿論、悪夢や夜歩きによる睡眠不足でも苦しんでいる。眠れ無いのが影響して、身体にも悪影響が及んでいる。彼女に付き纏う恐怖は只者ではない…その真の、本当の正体を…何時かはこの目で見る事になるだろう。マディラは強い恐怖感に包まれ、就寝の時刻が近づくに連れ…小刻みに震え出したのだ。それに見兼ね、そっと二人は傍にいると伝える事で彼女に安心感を共有した。午後九時になり、そろそろ就寝時間になってきた為マディラ達はベッドに向かい、眠りにつく準備を整え、そうしていると母親がドアを叩き、中に入ってきた。お休み前のディープキスだ、アメリカでは一つの挨拶のようなもので幼い頃からの恒例の事なのだ。「お休み、マディラもしっかり眠れるといいわね、これ以上睡眠不足が続いたら体調がまた崩れてしまって倒れてしまうわ、二人共マディラの事良く見ててね」「うん。分かった、ママ」と親子は其々会話を交わし、母親は娘らの部屋から退出した。それから三人は就寝につこうとするも、深夜帯が最も怪奇現象が頻繁になりやすい時間帯の為マディラだけに留まらず、二人も緊張状態になって眼を閉じても、すぐには寝付け無い。それだけじゃない、マディラは悪夢を見て苦しい唸り声をあげてしまうのでそれによって今度はフィリーナとリナベラが起きてしまう。その連鎖があってあまり満足のいく睡眠を取れることが以前よりも増して激減する始末…「ねえ……やっぱり眠れ無い……何だかモヤモヤするの」マディラは傍のベッドで寝かけた二人にぼやいた。「大丈夫?、もっとベッド近づける?そしたら安心するかな」マディラを想い、リナベラは提案に出た。それで安眠出来るなら…そう思って頷き、マディラ達は寄り添い合いながら今日は夜を過ごす。そうする事で、例えマディラが悪夢に魘されてもすぐ声をかけるし安心感が傍にあるだけで案外違う。でも、不穏な空気は段々立ち込めてくる。そうして、就寝について…部屋は静寂に包まれ、それによって感覚が研ぎ澄まされ、現象により敏感になりやすい。毎回深夜になっていくに連れて怪奇現象は音を立て始める。今日は皆んな良い眠りにつけると良いが……しかし、それは当然の如く奪われる…。ドンッドンッとドアが強く強打される音が鳴り響いてきた。「ひっ……、いきなり何…!」マディラはビクッとして飛び起きる。激しい物音は激化、ポルターガイスト現象も怪奇現象に誘発され、頻発…もう寝るどころではなくなり、マディラを狙うようにマディラ付近にだけ物が飛び交う。「待ってて、お守り持ってくる」リナベラは一人で取りに他の部屋に向かった。そのお守りとは……、数分程経って持ってきたのは十字架の飾り物…この現象は悪魔のせいである可能性が浮上していて、その為お守りも悪魔に対抗する為の物を。と、マディラは十字架の飾り物を見た途端に、叫ぶ声をあげたのだ。マディラに対してやっているわけではないのに一体どうしたと言うのか、「お願い、その飾りを下ろして…何だか、嫌なの…!」と明らかに十字架に対して拒絶している…それまで平気だったのに。と、突然ポルターガイストは止み、マディラは頭を抱えて蹲った。それに違和感を感じたリナベラはマディラに近寄り、「マディラ、………これ、急に怖くなったの?」とそっと尋ねてみた。マディラは何も言わずに、うんとだけ頷いた。「そっか、大丈夫だよ、私達がいるから…」とリナベラはマディラを抱き寄せ、それから暫く現象が起きないかを待ち、待った結果それからは現象は鎮まりやっとまた就寝につけそうと判断しベッドに戻って眠る。こうして、夜が明けた。次の日の朝、三人は普通に起きるが…まだ、マディラの隈は治って居ない模様。「目、まだ酷い隈だね…大丈夫?」起きて着替えている最中にふと目がいき、フィリーナは彼女にそう言った。「……何だか、頭がクラクラする…ずっと良く眠れない日が多くて…」とマディラは明かした。「マディラ、昨日もあまり寝てないもんね、悪夢に魘されてばっかりだったから」ときっと夜中唸り声がずっとマディラの方から聞こえていたのか、そうフィリーナは彼女を気遣う言葉をかけた。そうして、家族皆で何時もの朝食を食べ、その際リナベラは昨日の深夜に起きた怪奇現象、それからマディラが突如として十字架を嫌い始めた事を話すと、「そう、でも明日には専門家の人が来てくれる事になってるから、その時にでも話してみましょう、マディラ…今日まで我慢できる…?」とベネシアはマディラに尋ねると、彼女は下を向いて心も限界を悟っているものの、何とか堪えてゆっくりうんっと頷いた。「専門家の人に話せば何かしらの方法は必ず見つかるはずさ、だから辛いかもしれないけど、お姉ちゃん達と頑張れる?」と父親の方からも彼女に問いかける。すると、彼女は再度頷いた。そう決心したのは良いもの、学校に行けば彼女はまた間違いなく虐めを受けて、今よりもっと心が傷付きかねない。それを、両親は懸念している…、とにかく今日を先ずは乗り越えなければ。 朝食を終えて、マディラ達と父親は其々学校、会社に向かう。とは言ってもマディラ達は明日まではとりあえず母親の送り迎えをしてもらう。「皆忘れ物はない?」と毎回ベネシアは娘達に荷物確認を促す。そうして、学校へ行く準備は万全に。車に乗り込んで学校へ登校する、車内ではリナベラとフィリーナが今日も妹の事を気にかけている、日に日に彼女の目の下にできた隈が濃くなってその度に不気味、気味が悪いなど言われ、それで余計に心に大きな傷が出来てしまう。学校に到着して、今日は姉達に手を引かれながら車を降りた。と、ベネシアはマディラを心配してこう言葉を放った。「マディラ、今貴女を苦しめてるのは貴女のせいじゃない、もう限界だと思ったら心と体を労ってね、それでも無理なら私達家族皆を頼って良いから」と現象に苦しめられ続けている彼女にそっと寄り添う。本当なら家族皆辛いのは同じはずなのに、それ程彼女は愛されている証だ。そうして一旦母親とは此処までで、帰りにまた会う。しかし、今のマディラにとって今の学校生活は苦痛に等しく、まさに地獄も言い表せるほどに彼女に対する周りからの風評被害が激しいのが実情である。「マディラ、皆んなの声は気にしなくて良いからね」と毎回のようにリナベラ達はマディラに優しく声をかける。今日も、毎度のようにマディラに対しての酷い仕打ちが待っていた、陰口や罵声、嘲笑うかのような声、もう学校でさえも居心地が悪くなって益々彼女にとって落ち着ける場所がなくなって、精神も弱り果て何時病んでもおかしくないほどに…。ストレスも常に限界を迎え無意識に苛立ち、自傷行為をしている事からもそれは十分に理解できる。「学校終わるまで頑張れそう…?」とフィリーナは彼女の精神状態がかなり落ち込んでいるのを考え、ちょっとでも精神の落ち込みを抑えようとどんな時でも彼女に親身になって支えてる。ほんとに妹の事が大好きな姉二人。マディラは随分反応が遅れて、「うん」と言ってはいるが、明らかに表情が雲っていて、少しばかり無理しているのではないのか、そう思ってしまう程に彼女からもう、殆ど笑顔が消え去り…まるでマディラではないような…元気の面影もない。「…………….っ」苛々したのか、顔にそれを滲ませる。睡眠がまともに取れてなかった為にストレスがどんどん蓄積され、それによって苛々も起きやすくなっているのだろう。「大丈夫?、気持ち…苛々するの?」とリナベラはそうマディラに尋ねる。マディラは静かに頷く。「そっか、でもね。大丈夫だよ、私達がいるから…大丈夫だよ」フィリーナもマディラに親身に寄り添って、彼女の精神と心を守る事に徹している。悪魔に取り憑かれている事が確定したら、これまで以上に精神面に気を配る事が常に必須になる事だろう、その後…学校の授業中は地獄…ストレスが心の負担になり、マディラはついに耳鳴りにも余計に悩まされて、それに加え幻聴…もう耳を塞がないで過ごすのすら困難になりつつある…彼女は極限にまで追い詰められ続け…まともに生活が出来なくなるのも時間の問題だろうか。他の生徒には笑われ、それが更にストレスの蓄積を促してしまう。そうして数十時間後…何とか、今日の学校も終わり…終わった頃にはマディラは疲れきっており、姉二人が声をかけても精神不安になり…感情の起伏が非常に不安定な心身共に落ち込んだマディラ。「マディラ、辛かったね……でももう大丈夫だよ、ママも迎えにきてるし、早く家に帰って休もう…?」とリナベラはマディラにそう言って彼女は正気が消えたように表情は暗い …心配になる程に。「マディラ、大丈夫だった?」と迎えにきたベネシアは彼女に質問した。「………………………」急にダンマリになり、無口に。その事から大丈夫ではなく、もう限界を迎えようとしているのを見透かし、急いでベネシアは娘達を車に乗せ自宅へ帰宅。車内では…精神が崩れ落ち…マディラは啜り泣いていた。「……やっぱり、マディラの事を思うともっと休ませた方が良かったわね、学校でいじめられてるんでしょ?」とベネシアは運転しながらバックミラーから見える娘二人に言った。二人は当然彼女が虐められたりしてるのを間近で知っている為それで彼女が余計に今またストレスを抱えていると改めてリナベラはベネシアに話した。これ以上無理させたらもしかしたら生死に関わるそう考えたベネシアは、マディラに「事態がある程度収束するまではまた休学しても良いじゃない?、貴女がずっと苦しい思いをしているのは十分に私達家族皆んな知ってるから。それに無理するっていうのは今の貴女の身体にとっても心にとっても今以上に余計な負担になりかねない事よ、辛いからこそ我慢するのはやめてね」とベネシアは優しい口調でマディラにそう諭す。でも、マディラは今から数ヶ月前ずっと治らない体調不良で休学していた。それなのに、また休むのは彼女にとって家族に迷惑がかかる…そう思って本当は休みたくない。そんな思いが彼女にはあるが…でも、もうそんな事…強気ではいられなくなっているこの現状。だから、彼女は自身の精神面をよく見つめ……「ママ…………もう今は…学校には行けないよ…」とマディラはしょんぼりしつつも、今度は自分の意思で決め、自分で告げることが出来た。「マディラ、偉いわ。辛くても自分でちゃんと言えたもの」とベネシアは褒めた。些細な事でも、これは馬鹿にしている訳ではなくて褒める事によってマディラの精神面の支えをしているのだ。現状は特に彼女の心は折れやすく、落ち込みばかりのため何よりの心のケアも欠かせない。 「じゃあ、状況が良くなるまでマディラは学校を休みね、それと…二人もね」とベネシアはフィリーナとリナベラにも言った。何故かと言うと、彼女の精神ケアをしてもらう為だ、医者に診てもらうのが手っ取り早い事ではあるが、万が一そこで悪魔に取り憑かれてるんじゃないかと言う事が判明した場合、診断や診療自体を断られる事があるかもしれないし、それによって更にマディラが気に病んでしまう。そう考えた訳だ。「ねえ、私達のこの生活……いつになったら元に戻るの…」フィリーナはそう小さくぼやいた。現象に悩まされる事だけでなく、皆んなから浴びせられる罵声や笑い声、陰口…それらの悪循環が彼女ら一家を更に追い詰めていく…。「明日……やっと私達を苦しめる何かの正体がわかるんだよね……」とマディラは随分気弱なテンションになってそう言うと、「そうね、そしたらきっと今よりは気楽になれるわ、今はまだ何が私達をこんなに怖い目に遭わせてるのか、それがまだはっきりとしてないから、どうしても不安になっちゃうけどでも、きっと大丈夫…マディラ、貴女は一人じゃないんだから」とそう言ってベネシアは愛する娘をぎゅっと抱きしめる。「ありがとう……ママ」そっと感謝の言葉を伝えた。「私……一人じゃないんだ……」とマディラは涙をポツリと流し…ぎゅっと抱きしめられに行き…とりあえず、娘達は休養を余儀なくして安心と両親が判断するまでは自宅で過ごすようにする。でも、それでも、悪魔が…目には見えない存在が確かにこの家に棲みついていると、思うだけで鳥肌が止まらない…ましてや、女の子となるとそう言った恐怖心などが敏感なだけに明日は一日中お留守番という事になれば不安が止まらないだろう。「家には明日も私がいるから、安心して。それと、お父さんも休みみたいなの」とベネシアは娘達に話し、少しでも娘が抱えている不安をとろうと、優しい声かけをベネシアは心掛けている。そうしなくとも、元々がベネシアは優しい性格の持ち主で、いつも家族想いな女性なのだが、今は余計にそれが特に表に出さなければならない時で、知っての通りマディラが特に被害者…大切な娘が急に変わった…その事で最初はそんなベネシアでも困惑したが、何よりこの一家は家族の事を信頼しあって、信じあっているのがお分かりだろう。誰一人としてマディラの事を責め立てたりしておらず、心の支えになろうという姿勢からもそれは十分に伝わる筈だ。 「さて、私は色々家事でやる事があるから着替えて皆んなはゆっくりしてて良いわよ」とベネシアはそう言って火家事に取り掛かり始めた。「うん、ありがとう……ママ」マディラは元気などなく、とても暗い顔をしてそう返事をする。とりあえず、今日も今日とて学校から貰った課題を姉妹揃ってみんなで解き合う。大体、数学や英語、たまに地理の課題が出るようで、毎回三人とも悩みながら必死に解いていく。「明日、やっと私達を苦しめるものの正体が分かるね、マディラも良かったね、不安が少し減る事になるんじゃないかな」とリナベラは優しく彼女に言うも、何だかパッとしないような感じだ。まあ、それはもう仕方ない、だってもう手遅れ……どんな事実が明らかになろうが、彼女はもう既に憑依されているのだから。「何だか、ずっとあの時から……耳元で声が煩いくらいに聞こえて来て……その声に逆らおうとすると………脅される……ずっと何かに見られてる感じがして気持ち悪いの」とマディラは止まらない恐怖心を語る。現象に苦しめられてきてはや数ヶ月…やっとこさ遂に相談という手段に出れたが、それがあまりにも遅すぎてマディラは悪魔の監視下に晒されている。もう悪魔の支配の元からは………………ニゲラレナイ。 「そっか……まだ声続いてるもんね……そんな簡単に気持ち楽になれないよね…ごめんね、マディラ」とリナベラはマディラの頭を優しく撫でた。 「怖いよ……でも後もう少しで私達を苦しめる悪者の事判明するんでしょ?……ならそれまで怖がるの我慢する」とマディラは勇気を持ってそう告げた。これも家族の支えがあってこそだろう、誰一人として助けもくれなかったとしたらと考えると、今のマディラには家族という大きな支えの存在がいる事が何よりも大きいのが分かるだろう。こうして、とりあえずマディラ達は今日の課題を終え…テレビを見たり本を読んだりの娯楽を楽しむ。「そういえば、このいえママやパパが私達が小さい頃に玩具もだけど本も沢山あるから未だ読んだ事ない本が沢山あるよね、そういう読んだ事ない本見つけて見ない?良い気晴らしになりそうじゃ無い、新たな知識と発見を見つけられる良い機会だと思うし」とフィリーナはそうマディラに提案する。悪魔や怪奇現象のせいで沈んだ気分を少しでも明るくして悪に対抗しよう、そう彼女は考えた訳だ。悪魔…一般的には悪霊と認識され、それよりもタチが悪いのが悪魔だと良く言われる。そして、特に悪魔の標的になりやすいとりあえずされているのがちょうどマディラ達の年齢の子供…此処、アメリカでは悪魔によって引き起こされた事例が数多く存在する為に悪魔の存在を信じる人間も非常に多い。 「本…読むの好きだから、まだ読んだ事ない本気になる…でも、あの書物庫に取りに行くんだよね、もう夕暮れ時だし、またポルターガイストが起きちゃうかも」とマディラは現象を不安視する。でも彼女が怯えるのも無理はない、彼女は他二人と比べてかなりの怪奇現象に遭遇し、彼女にしか見えない何者かに襲われた瞬間も会った為に部屋を歩き回るのですら怖くなってしまっているのだ。「それもそっか、じゃあ音楽でも聴く…?ちょっと前にね、ママが家でも遊べる楽器を頼んでくれたみたいなの、それが多分もう届いてるんじゃないかな、マディラにって言って購入した奴らしいから、私が部屋見に行って取ってくるよ。フィリーナ、悪いけどマディラの傍に居てくれない?」「え…?、勿論マディラの傍には着いてるけど…でも一人で大丈夫なの?」とフィリーナは度重なる怪奇現象が怖くなって、以前まではお化け屋敷などに行っても平気で涼しい顔をしていた彼女らしいが、それが逆転して今ではマディラ同様に怖がりになってしまったようだ。「大丈夫!、それにマディラの事を元気づけてあげないとでしょ?、だからその為にもね」「分かった、でも気をつけてね」とフィリーナとリナベラはそう会話を交わし合い、とりあえずリナベラ一人でマディラの部屋に置いてあるという楽器を取りにいく事に、と先ずはその前にマディラの部屋に入る為の合鍵を持ってこなくては。実はこの怪奇現象が 多発する前までは鍵などなく普通に部屋を出入りしていたが、ポルターガイスト現象や不可解な現象が起きる幽霊屋敷と周囲から呼ばれるようになるようになった頃ぐらいから、最も現象が多発しているマディラの部屋を中心に殆どの部屋を施錠しており、その為出入りするには専用の合鍵を持ってこなければならない。
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