春の終わりに

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 両親は、浪人を認めてくれた。一年生の頃から、目指していたことを知っているから認めてくれたのだろう。  働きもせず、浪人させてくれるのはとても恵まれていることなんだろう。  ただ、それが時々、(プレッシャー)にもなるんだ。絶対に進学しろという(プレッシャー)だと思うんだ。それが本当は少し辛い。せっかくここまで大切に育ててくれたのに希望に添えない子だということが辛かった。  お父さん、お母さん。ごめんなさい。本当は、きっとあの大学には、いけない。不純な動機で絶対そこが良いと言って他の大学受験しなかったけど、あの大学を受験することはない。もうしばらくの間だけ、この嘘をつかせてください。  両親の顔を見るたび、心の中で謝罪をする。正直に、言えば大学に行く意味なんて分からなくなっていた。あの大学に限らず、受験をするのかだって怪しい。だから、予備校には通っていない。両親も先生も勧めたけれど、通わなかった。  もしかしたら、薄々気づいてはいるのかもしれない。私の表情で気づいているのかもしれない。  両親の頃より、浪人する人は少ない。みんなが楽しんでいる中、取り残される寂しさに気づいているのかもしれない。  SNSを確認すれば、友達が彼とデートに出かける写真を投稿していた。私は、それにいいねを付けてアプリを閉じた。  もう終わったんだ。私じゃ叶わなかった。近くにいたから知っている。友達は、真面目ないい子だと知っている。だから、羨んでも仕方ないんだ。  もう、すべてが終わってしまった。もう、きっと恋なんてしない。こんな思いしたくないから。  
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