春の終わりに

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 家に帰る途中に、新しいカフェがあることに気がついた。  そこは新規アルバイトを募集していることにも気がついた。  正直、ずっと家にいるのは、もう嫌だった。たとえ、両親がいなくてもちゃんとしていないといけない気がして息が詰まった。不合格通知をもらう前までは、そんなこと考えもしなかった。だからと言って、毎日何もしないで外で過ごすことにも罪悪感があった。外で働いて役に立ちたいと思った。遊ぶお金が欲しいわけでもない。意味のない日々に意味を持たせたかった。  けれども、両親に話したら、反対されるような気がした。それでも、きっと、断られたとしても、働く気がした。一目見た時、そこの制服を着て働く自分の姿が脳裏に浮かんだ。ここはきっと私の居場所だと思った。  家に着くとまだ、二人は帰っていなかった。私は、それをいいことに買ったばかりの履歴書に記入を始めていた。  予想に反して、二人はバイトに応募することを許可してくれた。  履歴書をすでに準備し終えていたためか、受かると思われていなかったのか。高校生の時、散々アルバイト反対していたのに認めて貰えた。  そして翌日、そこに電話をして即日で面接をすることになった。結果は、合格でその場で言い渡された。  両親は、合格になったというととても驚いていた。  私は、何もなかった日々に、色がついて行くようでとても嬉しかった。
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