春の終わりに

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 私は、絶望していた。扉の前で途方に暮れていた。  来るときは、晴れていたからと傘を持ってくるのを忘れてしまった。とても傘なしで歩けるような雨ではなかった。徒歩十分ほどの距離だし、歩いたって良かった。それでも、親に怒られることは容易に想像がついた。  そんなとき、後輩君が着替えを終えてやってきた。私は、傘もないのに飛び出した。パッんと傘が開く音がした。私は、その傘に行く手を阻まれて後ろを振り返った。  「先輩。飲食なんで体調管理気をつけないとだめだよ。傘忘れたからと言って雨の中帰るべきじゃない。」  「じゃあ、どうしろっていうのよ。」  「一緒に帰ろう。この傘大きいから。」  「いやよ。私の家知られたくないもの。」  「じゃあ、駅まで一緒に来てそこで傘買おう。」  「そういうことなら、ありがとう。」  私たちは、たった五分の道のりを十五分かけて話しながら歩いて帰った。久しぶりに、話した後輩君の声を聞くと不安な気持ちが吹き飛んでいくような感覚があった。後輩君は、私の話を真摯に聞いてくれた。そして、分野は違うけどと前置きをしたうえで勉強を見てくれると約束してくれた。  だんだんと、気持ちが晴れて言った。それに呼応するように雨もだんだんと弱くなっていった。  駅に着くと雨が上がって空には虹がかかっていた。
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