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「ッ、あ! いい……」
「これなら、すぐに入る」
たちまち指が増やされて、僕は堪らず司狼の首に手を回した。ぐちゅぐちゅと水音が聞こえて、甘い匂いがたちこめる。
「……はぁ、こんなにいい香りをさせて。もう、蜜だって手首まで滴ってる」
花食みを受け入れたいと思う時、花生みの中は蜜で満ちる。満開の花が蜜を宿すように、奥からは愛液が滴り落ちてくる。
ずるりと指を抜いた司狼は、僕のひざ裏を持ち上げた。天を突く自分の楔を、僕の後孔の入り口に押し当てる。
「ああ、挿れるね、凪」
ぐちゅり、と大きな楔の雁の部分が入ったかと思うと、みちみちと肉襞の中を進んでくる。僕は堪らず声を上げた。司狼の楔が擦れるたび、体が気持ちよさに蕩けていく。
司狼の額には汗が光り、何度も大きく息を吐く。まるで肉食獣のような目をした司狼の腰の動きが早くなる。パンパンと打ち付け合う音がして、休むことなく奥まで突かれる。
「あっ! あ! いっちゃ……」
大きく足を広げられ、思い切り奥まで突き上げられた瞬間、僕は先端からドロリと白濁をこぼした。ぎゅうっと中を締め付けると、美しい眉を歪めた司狼の楔が一際大きくなる。びくびくと震えがおさまらない中で、何度も大きな抽送が続く。
「……出すよ、凪」
「あ……あああ……あ」
奥に一気に熱が迸り、僕の体に悦びが走る。枯渇しきった体は、司狼がくれた体液をあまさず吸収していく。
――これは僕のものだ、ぼくだけの雄だ。
貪欲なほどに花食みの熱を飲み込んで、僕はうっとりと微笑んだ。目尻からは、一筋の涙がこぼれる。司狼が僕の体に覆いかぶさり、キスをした。
「泣かないで、凪」
何度も髪を撫でられ、ついばむようなキスが続く。
ふわり、ほろり。
僕の中から花が生まれる。それはこれまでのように痛みに満ちた中で生まれるものじゃない。
「凪の花だ」
左の鎖骨から芽吹いた花は、僕が触れれば手の中に落ちてくる。ころりと丸い蕾から花びらがほころぶ。何枚も何枚も薄衣のような花びらが開き、司狼のために大輪の花を咲かせる。
「……食べて、司狼」
これは司狼を想って生まれた花。
僕は、司狼のためだけに花を生む。
司狼は恍惚とした表情を浮かべ、両手で押し頂くように僕の花を受け取った。
花に口づけ、花びらをそっと食んでいく。まるで砂漠の中で与えられた水のように、司狼の目に入るのは僕の花だけだ。
一心に花を食べ終えた司狼が僕をかき抱く。頬にぽとりと温かいものが落ちてくる。
……つらかったのは、きっと、僕だけじゃない。
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