五流小説家の引っ越し

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 今活動しているWeb小説サイトは、その時仕上がった作品の趣旨にあうコンテストを探した時に偶然見つけたサイトだ。  このサイトは非常に居心地がよく、私はそう器用なほうではないので他のサイトには目もくれていなかった。  しかしミステリーが書ける気がしない今、旅立ちの日が来たのかもしれない。 「ミステリーな事情」は最終話までの投稿を予約しておいた。  長年お世話になったこのサイトは、閲覧数とコンテストの結果を確認するのみとなる。  新境地としてのWeb小説サイトは、大手ではないがなかなか活発であり、青春小説も多数投稿されている。  この場でミステリー執筆活動十数年歴の腕を使って「アオハル作家」を目指そうじゃないか。  活動(引っ越し)先が決まればあとは執筆するのみだ。  私はプロットの詳細をどんどん書き込み、パソコンを起動し一気に書き上げた。  残念なことに私は学生時代に青春を堪能した覚えはないので、今の彼女と出会った時のトキメキや、付き合い始めた時の初々しかった気持ちを思い出しながら綴っていった。  それだけでは味気がないので、若い女性が好みそうなエッセンスもちりばめ、ひとりニヤニヤしながら書き上げた。 「……完成だ。さぁ、『新たな私』の初投稿だ」  新しいペンネームを決め、新境地でアカウントを作成する。  思った以上に文字数が少なかったのでとりあえず連載形式にはせず、一気に最終ページまで投稿することにした。  早く読者の反応が見たい、というのも全投稿の理由の一つだが。  ―――ぽちっ、と「投稿」ボタンを押した。  
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