12.ただ一つの幸せ ※

4/4
前へ
/65ページ
次へ
 ◇◇◇  大鷲に姿を変えた竜は、自分の奥深くにある人の子の魔力が変わったのを感じた。  今にも消えそうなほど小さかった魔力が、ゆっくりと回復していく。レオンに力を与えたのは、番であるフロルだろう。 〈あーあ、どうやら上手くいったらしいな。何だか腹が立つが仕方ない〉  銀色のねずみを見てもフロルを思い出すなら、レオンを生かす価値はある。密かにそんなことを考えて魔法をかけた竜は、ため息をついた。  カイはフロルたちに初めて会った時のことを思い出す。死にかけていた竜を助けた子どもたちは、同じ色の『気』をまとっていた。竜ならば、一目で自分たちが大切な番同士だとわかる。だが、『気』を見ることができない人間たちは、性別や香りがないと己の番の判別もできないらしい。全く不自由なことだ。 〈可愛いフロルを泣かせる奴の命など、本気でどうでもいいと思っていたが……。この体は、根本であいつの魔力と繋がっている。まあ、しばらくは様子を見ながら一緒に暮らすとするか〉  カイは番となった二人に祝福を与えると決めている。どこにいても彼らが幸せに暮らしていけるように力を尽くすつもりだ。竜とは、太古の昔から愛情深い生き物なのだから。  眼下にざわざわと多くの人が集まってくる。魔術師たちが、竜の力を感じとって騒ぎ立てているのだろう。 〈──さて、急がないと〉  ようやく心を確かめ合った恋人たちの邪魔をすることに決めて、竜はまず、北の塔の屋根を吹き飛ばした。         【 完 】 一・一・一・一・一・一・一・一・一・一・一 ⭐お読みいただきありがとうございました! すれ違い、こじれた二人をずっと見守っていただき感謝ばかりです。皆様からの毎日のスターやぺスタ、ぺコメに大変励まされました。明日からは番外編になります。時間は変わらず更新しますので、続けてお付き合いいただけましたら大変嬉しいですヾ(´∀`*)ノ💕
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1343人が本棚に入れています
本棚に追加