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2.レオンの苦悩
最近のフロルの様子がおかしいことに、レオンは気がついていた。あまり自分と視線を合わせようとしないし、リタと共に部屋を出ることが多い。以前よりも笑顔を見られなくなったような気がする。
(もしかして……避けられているのだろうか?)
レオンは焦った。何かまずいことをしただろうかと必死で考えた。メイネの魅了魔法にかけられていた時は、散々フロルを無視するような態度をとった自分だ。もうフロルを苦しめるような真似をしてはいけない。愛情はきちんと形にして伝えなければと心に刻んでいる。
――回りくどい真似をして、フロルに誤解を与えないように。
そう思って、朝に晩に好きだと告げた。照れながらも微笑んでくれるのが嬉しくて、つい何度も抱きしめてしまった。何も言わず腕の中にいてくれたから、自分と同じように幸せな気持ちでいてくれるのだと思っていた。
(そもそも、それが勘違いだったのか)
二人きりの食事の時には、何でも美味しそうに食べる姿が可愛くて仕方がなかった。あの小さな口に自分の手から食事を与えたい。膝に抱き上げることができたらもっといいのに。そんな気持ちばかりが日々膨らんでいった。
ある時、フロルが輝くような緑の葡萄を美味しいと喜んだ。自分の手元にあった一粒を、さりげなく「食べる?」と聞きながら口元に運ぶ。すると、まるで小鳥が啄むようにぱくりと自分の手から食べて、恥ずかしそうに笑った。その姿にぞくぞくと体中が震えた。それ以来、自分の食事よりもフロルに食べさせることに夢中になった。
(子どもじゃないんだから、と言われたことがあった。あれは嫌だと言いたかったのか……)
拗ねたような口ぶりが可愛くて、聞き流してしまったことが悔やまれる。一度考え出すと、あれもこれもと、全てが失態に思えてくる。
フロルに直接確かめよう、それが一番いい。互いに話し合わないから誤解が生じるのだ。過去の痛い経験から学びを得たレオンは勇気を振り絞って、フロルに尋ねた。
「何か自分に不満があったら言ってほしい」
フロルは力なく首を振った。知らぬ間によくある病にかかったらしい、しかも自力でしか治せないみたいだからと言って。
レオンが動揺して近くにいたリタを見ると、眉間に深い皺を寄せている。病とはどういうことなんだと叫びかけた時、城中の空気が震えた。
「カイ様! ご無事で」
「主様! お帰りなさい!」
大きな歓声が聞こえる。久しぶりに隣国からカイが帰ってきたのだ。
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