第一話『学問の神様』

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第一話『学問の神様』

プロロ―グ 『じゃあ勉強なんて意味ないじゃない!役に立たないし、じゃあ今まで私のやってきた勉強は無駄なの?』 夕暮時、私は公園で叫んでいた。菅原くんはそれを見て一瞬驚いた顔をしながら言った。 『いや、無駄ではないんじゃない?きっとどこかで役に立っているんだと思うよ。』 『どこかってどこ?私は本当は勉強なんてずっとしたくなかったのに!』 第一話『学問の神様』 『言結ちゃんって本当頭いいよね~。羨ましい。』 私の顔を見ながら友達はそう言った。(”頭がいい”····か。) 私はスカートを机の下で握り締めさらに笑顔を作りながら言った。 『そんな事ないよ〜。私は全然頭がよくなんてないよ。』 『そんな事ないじゃん!いっつも成績優秀者を載せる紙にのっているじゃん!』 (”頭がいい”と”勉強ができる”って言うのは別物なんだけどなあ···。) 私はそんな事を考えながらゆっくりと口を開いた。 『そんな事ないよ。私は全然頭がよくなんてないよ。』 キ―ンコ―ンカ―ンコ―ン キ―ンコ―ンカ―ンコ―ン 私がそう言うとチャイムがなった。友達は『バイバイ!』と言って席に戻って行った。 放課後 『やっと帰れる···。』 私は帰り道、一人ごとをつぶやいた。横断歩道の信号が青くなったのを確認して渡った。すると急にトラックが出てきてしかも止まらないのだ。 (え、私これ死ぬんじゃー···) ドンッ! ブシャッ! どのくらい気を失っていたのだろうか。私は走馬灯を見ていた。私はいつまで嘘の笑顔を作り続けるのだろうか。一度でいい、心の底からお腹の底から笑ってみたかった。 『大丈夫?』  そう言って私の前に現われたのは、同じ歳くらいの男の子だった。あれ?私、トラックにひかれたのになんでこんな意識がはっきりしているんだろう。 『ああ、えっと····。』 "大丈夫です。"と言おうとしたがまずこの状況が理解できないのだ。ええと、確か―···。 『君は、トラックにひかれて今、生死をさまよっているんだよ。』 『え?えっとどういうことですか?』 言っている意味が全くわからない。何を言っているんだろうか。 『ほら、あそこの救急車。君が今担架に運ばれているよ。』 『ひぃっ!!。』 私は、思わず声をあげた。なぜなら頭から血をながし足からは大量の血を流している私がすぐ目の前にいたからだ。よく見ると少し奥の方にパトカーがあった。警察官が数人いてトラックの運転手らしき人と話していた。 『ど、どういうこと?ねぇ、私は、なんで生死をさまよっているんだったらなんでここにいるの?』 『まあまあ、落ち着いて。君はトラックにひかれた時に幽体離脱して、一時的に幽霊になっちゃたよ〜って感じ!』 『え?私、幽霊なの?』 『そういうこと!俺と幽霊仲間!!』   『えぇ?あなた幽霊なの?』 白いシャツを着た男の子は、なぜか咳払いをして言った。 『俺は、菅原道真。学問の神様で日本三大怨霊の一人。』 『菅原道真·····。』 教科書で何回か見たことがある。ひげが長くて、勉強がすごくできる人だ。 しかし私の前にいる男の子は、ひげがなくて少し童顔でかわいらしい子だ。本当にこの子、菅原道真···? 『俺、学問の神様なんだけど実は勉強嫌いなんだ〜。』 (えぇ、学問の神様が勉強嫌いって言っている。すごい光景だ。) 『で、今日は君に会いにきたんだ〜。』 (なんで、私なんだろう。) 『”歴史学校”っていう歴史人物が、通う学校があって俺はそこの案内人。君を連れてくるように頼まれたから君に会いにきたんだ〜。』 『は、はぁ·····。』 『まあ、詳しい説明は向こうでするからついてきてよ。』 (うーん、さっきから聞いてて怪しいこと言っているんだよな。それに私、歴史人物じゃないし····。) 『あの···。私、歴史人物じゃないですよ?なのに、どうして?歴史人物が通う学校に通うことになってるんですか?』 私がそう言うと白いシャツの男の子はニコッと笑った。 『あたりまえじゃん!君も立派な歴史人物だよ~。』 (なんで?私、偉いことしてないのに。) 『”人”の人生が”歴史”だ。”人”と”人”が関わることに、よって”歴史”が生まれる。』 『は、はぁ。』 『”人”が関わる事によってトラブルが生じる。そんなとき、助けたり解決したりすることでその人の”歴史”を作る事ができる。』 (この人、何言っているんだろ。) 『まあ、そんな事はおいといて、とりあえずついて来て〜。』 (ついていっていいのかな。どう見てもこの人怪しいし···。) 『ごめんなさい。私、勉強しなきゃいけないので。』 私がそう言うと、菅原くんは一瞬、驚いた顔をした。 『まあまあ、いいじゃん。たまには、遊びも必要だよ?なんで、そんなにやるのさ。』 (私だって本当はもっと遊びたい。でも、遊ぶと時間が取られてしまうし···。) (時間が取られて、私が今まで培ってきた知識が消えるのが怖い。それにお父さんとお母さんの期待を裏切りたくないし···。) そんな時、頭の中にある人の言葉がよぎった。 『言結ちゃんって本当頭いいよね~。羨ましい。』  違う違う違う!! 私はなんで、頑張っているのに、誰も私の努力を見てくれないの? だめだ、涙が出てきそうになる。 『大丈夫?』 『う、あ、はい。』 (私は、人の話中になに考えているんだ。) 『じゃあさ、勉強から抜け出して遊ぼうよ。』 『え。』 まさかそんな事言われると思っていなかったので 固まってしまった。   『勉強なんてさ、くだらない事をいってるだけなんだからさ。』 そう言って白いシャツの男の子―菅原道真くんは私の手をひいた。 『せっかくやるんだったら楽しくやろうよ。』 楽しく··か。考えたことなかったな。この白いシャツの男の子―菅原くんの事を信頼できた気がする。 『せっかく遊ぶならさ、とことん遊ぼうよ。どこ行きたい?』 (私がやりたいこと··か。甘いものが食べたいしジェットコ―スタ―にも乗りたいなぁ。) 『遊園地、あ、あと甘いものが食べたい!』 『うん、わかった。』 『甘いスイーツのいいお店、知ってるんだ〜。』 菅原くんは、にやっと笑って言った。 『で、言いづらいんだけど、俺と君は、幽霊だから行くとしても天界の所しかいけないんだ〜。』 菅原くんは、私の方を見て言った。 『それでもいい?』 『はい。全然大丈夫です。』  私がそう言うと、菅原くんは、ニコッと笑った。 『よかった〜。じゃあ、一緒に河川敷まで来てくれない?。』 (なんで河川敷なんだろう。) 10分後、私と菅原くんは河川敷にいた。 菅原くんは私には聞き取れないなにかをいっていた。 (なに言ってるんだろう。) 『よし!できたよ~。神野(かみの)さん、こっちおいで〜。』 『あ、はい。』  そう言いながら私は菅原くんの元にいった。 『って、菅原くん、なにこれ?』 菅原くんと私の前におっきい扉があった。 『ああ、これはなんか天界に行く扉みたいなかんじ〜。』 『へ、へぇ·····?』 『じゃあ、準備はいい?』 『え?』 なにを言ってるんだろうかと思っていたらクイッと優しく手をひかれた。 『今から飛び込むんだけど、高いとこ大丈夫?』 『は、はい?』 『んーと、この扉に入ったら天界に行けるよ〜って感じ〜。』 『は、はぁ···。』 『じゃあ、せーので飛び込むよ!』 『え?私、高い所ちょっと苦手でー·····。』 私がそう言うと菅原くんはニコッとわらった。 『大丈夫。それにもし神野さんが落ちても俺が守るさ。』 (え、菅原くん優しい。最初は怪しかったけどいい所あるのね。モテそう。) 『せーのっで行くよー。大丈夫?』 菅原くんは私の顔を心配そうに覗き込んだ。 私は小さくうなずきながら『うん。』と言った。 菅原くんはそれを見てニッコリとわらった。 『じゃあ、いっくよ!せーのっ!!』 菅原くんが手を大きく振り上げたー···そして扉の前にとびこんだ。 『わ、わぁっ·····。』 私の目の前に広がっていたのはすごく綺麗な景色だった。 ビルやマンションの横に花壇があって、緑や紅葉、植物がたくさんあり、とてもカラフルでいい町だと思った。 (へぇ、天界ってこんな所なんだ。綺麗だなぁ。) 私は呑気にそんな事を考えていた。 すると菅原くんが口を開けた。 『ここらへんでスイーツが美味しいとこはたくさんあるんだ。どんなスイーツがいいとかある?』 (菅原くん、優しいなぁ。えー、うーん····ホイップのたっぷり乗っかったホットケーキが食べたいなあ。) 『ホイップがたくさん乗っかったホットケーキが食べたいです!!』 『うん、OK〜。』 菅原くんは、少しなにかを考えるしぐさをした。 (菅原くん?どうかしたのかなぁ。) 『菅原くん?』 私が話しかけてるとよほど集中してその事を考えていたのか菅原くんは驚いた顔をした。 『ん?あ、ごめん。行こっか。』  15分後 菅原くんの言っていたいいお店というのはすぐにみつかった。路地裏の少し奥に入った所だ。桃色とさくらんぼのかわいい絵が、屋根に描かれていた。 (わぁ、かわいい〜。) 私がキラキラした目でかわいらしいデザインの看板や屋根を見ていると菅原くんはくすっと笑った。 『え?なに?』 私は後ろを振り向いた。 『ごめん、ごめん。そういえば神野さんの嬉しそうな姿が可愛くって。』 か、かわいい!?私が?私は顔が自然と赤くなるのを感じた。 『じゃあ、入ろっか。』 私はバクバクする心臓を服の上から抑えながら歩いた。 『う、ぁ゙あ、はい。』 私と菅原くんは、おしゃれな装飾をしているお店に入った。 カランカランと気持ちのいい鈴の音がなった。上を見ると、鈴が取り付けられていた。 『いらっしゃいませ。何名様ですか?』 私と菅原くんが入ると可愛らしいお姉さんが出てきた。 『2名です。』 菅原くんが慣れた手つきで言った。 『2名様ですね。あちらの窓ぎわの席でもよろしいでしょうか?』 そう言ってお姉さんが手の平を席に向けた。 『全然大丈夫です。ありがとうございます。』 (菅原くん、感じいいなぁ。) 『じゃあ、行こっか。』 『はい。』 菅原くんと私は席にすわった。菅原くんは私はお互いに向かい側の席にすわった。 中は思ったより混んでおらず中には私と菅原くんぐらいだった。 机の右端にメニュー表を菅原くんはさっととって、私に渡してくれた。 『ん。はい、どうぞ。』 『あ、ありがとう。菅原くんは見なくていいの?』 私が少し心配そうにいうと菅原くんはへにゃっと笑った。 『大丈夫さ、それに俺じゃなくて今日は神野さんが 主役でしょ?』 (菅原くん!なんていい子なの!!) 私は菅原くんの優しさに内心感動した。 (ん~、なににしようかな。) 私はそう思いながらメニュー表を見た。 “ホイップつけ放題激うまホットケーキ”1200円 ん~~、美味しそう。でも値段がちょっとなぁ。 ”季節限定!いちごのパフェ!”800円 あ、こっちなら値段的に大丈夫かも。でも私が今食べたいのは、パフェじゃなくてホイップが乗っかったホットケーキなんだよなあ。 私が迷っていると菅原くんは言った。 『大丈夫。俺がお金払うから。』 菅原くんは優しい目で言った。 『え?いいんですか?でも私、財布ー···。』 ”持ってますよ”と言おうとしたが辺りや体のあちこちをさわってみる。 『え?あ、ない。』 もしかして車にひかれた時、一緒にどっかに飛んだ!? 『神野さんがトラックにひかれた時、学生カバンが飛んじゃったのさ。まあ、こっちの世界でも、おんなじものが渡されるから、大丈夫。』 (うーん、本当かなぁ。) 『遠慮しなくていーから。大丈夫、大丈夫!!』 (うーん、じゃあー·······) 『このホイップホットケーキが食べたい!』 『ん、りょーかいっ!』 菅原くんはそう言いながら机の上のボタンを押した。 すぐに店員さんが来て注文を聞いてくれた。 待っている間、菅原くんが すみません、途中までしかかけてません。また書きます。
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