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「わっ、な、なに!?」
楓ちゃんと東條くんが
待つ個室へと向かっていると
急に頭から何かを被され
目の前の視界がシャットダウンされた。
「着てろ」
そう言われて
頭に被されたものを確かめると
それは佐藤くんが
今、この瞬間まで着ていたスーツの上着だった。
「え、でも」
「いいから着てろ」
ジロリと睨まれ
私はおとなしく
借りることにして袖を通せば
ふわりと香る佐藤くんの香りと
肌に感じるぬくもりが私の胸の鼓動を一気に加速させる。
「ありがとう佐藤くん」
「別に」
佐藤くんは
他人に興味ない冷たい人だと
思われがちだけど本当は違っていて
今日のお昼もそうだけどこうやって
佐藤くんは見てないようにしてちゃんと見てくれている。
「洗って返すね」
「いいよ、別に適当で」
「だーめ!ちゃんとクリーニングに出して返すから」
「はいはい」
正直さっき
水をかぶった時
最後の最後に
ついてないなって
思ってたけどそれは間違いだった。
だって
こうして
佐藤くんが助けてくれたから……
「えへへ」
「何笑ってんの」
「だって、嬉しかったから。ありがとう、佐藤くん」
「お前からのお礼はも聞き飽きた」
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