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負けたわけでも、誠司がミスをしたわけでも無かった。だから、誘われるなんて思ってもなくて、不意を突かれてしまった。
理由なんて無かったから。
「……ごめん。きつい?」
誠司に聞かれて、「痛いって……言ったのに止めねぇから」と言い返した。最中の事なんて話したことなくて、恥ずかしさに耳が赤くなって俯いた。
「ごめん……ちょっと止らなくなって……」
「止らなくなってで、乱暴にされる方の身になれよ」
声を荒げて、ロッカーで擦れた手を擦った。
「だって、平良が…………くて」
誠司は俯いて小声になった。何を言ったのか分からなくて、「何?」と聞き返した。
「……平良が、可愛くて」
「か、かあ、可愛いって……何だっ」
誠司の言葉に驚いて背中をロッカーにぶつけた。
「そんなに引く?」
「ひ、引くとか、そういうことじゃなくて……だって、お前、そんなこと言った事無いし……」
誠司に可愛いなんて言われたことなんてない。
「普通男に言わないだろ」
「そ、それはそうかも、しれないけど……そんな感じじゃなかったし……」
「俺、充分平良のこと可愛がってたと思うんだけど?」
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