1. 20歳

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1. 20歳

 それは、お盆休みに開かれた中学の同窓会の後、みんなで行った欅の木の下でのこと。  中学校から歩いて20分ぐらいの丘の上に、その欅の木はあった。  担任の先生を囲んで写真を撮り、ワイワイとお喋りをして解散。みんなと一緒に坂道を下りかけて、裕也は、前を歩いている博美に、勇気を出して声をかけた。 「園田さん」  友だちと並んで喋っていた博美が振り返り、 「あっ、初瀬川くん」  微笑が広がる。 博美は、裕也が密かに好意を持っていた人。  中3で同じクラスになり、一緒に学級委員をやるうち、気付けば好きになっていた。  でも、その気持ちは、結局伝えられないまま卒業。それ以来の再会だった。 「もうちょっと、話さないか?」  裕也はそう言って、欅の木を指差した。 「えっ……」 「いいよ、博美。行ってきなよ!学級委員同士の話、あるんでしょ?」  隣の友人が、いじるような笑顔で博美の背中を押す。  そうして、集団からそっと離れ、二人は丘の上へと戻った。 「6年振りだね」  根元に並んで座り、裕也が言った。 「卒業式以来?」  と訊く博美に、 「二人でとなると、もっと前」 「あぁ、一緒に学級委員やってた二学期以来か」 「そう。委員会の後、何度かここで話をして帰ったよね?」 「懐かしい!」  二人は、夏の夕日に染まり始めた遠くの山並みを眺める。  丘の下の別れ道まで通学路が一緒だった二人は、月1度の委員会の後、ここに来て少しだけお喋りしていくのがお決まりだった。 「成人式には帰って来たの?」  博美が訊く。裕也は首を振って、 「来たかったんだけど、風邪引いて寝込んじゃって」 「そうだったんだ」 「園田さんは?」 「私?……出たよ。一応」  博美はそう言ってフッと笑った。  裕也も博美も、あまり目立つ方ではないが、成績が良くて真面目ということで、学級委員に祭り上げられたようなものだった。 「一応?」 「私、ちょっと苦手なんだよね、集まったりするの」 「そうなの?みんなで楽しそうに喋ってたイメージあるけど」 「うん。でも、ホントは合わせてるだけ」 「そうなんだ」 「うん。だから、今日は疲れたよぉー」  そう言って思い切り両腕を伸ばし、胸を反らす。
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